研究課題/領域番号 |
23370046
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
桑田 晃 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所, 主任研究員 (40371794)
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研究分担者 |
斉藤 憲治 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (80371798)
佐藤 直樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40154075)
吉川 伸哉 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (20405070)
沢田 健 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20333594)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プランクトン / 進化 / 分類 / 海洋生態 / 藻類 / 珪藻 |
研究概要 |
珪藻は微細藻類ながら熱帯雨林と同等の炭酸固定を行い、海洋で最も多様で重要な一次生産者であるが、その起源・繁栄機構は依然不明である。我々は 近年、珪藻同様シリカの殻を持つ 微細藻類で培養不能なためその生物学的特性が全く未知であったパルマ藻の培養に発見以来30 年後に世界で初めて成功し、この藻類が非常に限られた海域で生存しながらも珪藻と極近縁で共 通の祖先を持つことを明らかにした。本研究は、珪藻の進化の鍵を握るパルマ藻と原始型かつ全球的に卓越する中心珪藻を対象に1.ゲノム解析、2.生理生態学的解析、3.生物地球化学的解析を統合して全貌を明らかにし、両者の相互比較により珪藻の出現から現在の繁栄にいたる進化過程の解明を目的とする。本年度は、1.ゲノム解析については、パルマ藻Triparma laevisのゲノムアセンブリから,葉緑体ゲノムを含む scaffoldを取り出し,PCRを使って互いの結合部の配列と,内部の未解読部分の 配列をそ れぞれ増幅したうえで,Sanger法により配列を決めた。これにより, 葉緑体ゲノムの配列の全体をきめた。2.生理生態学的解析については、パルマ藻の珪酸質外被形成機構について、培地中のケイ酸塩濃度の調節により外被形成を制御しながら、走査型顕微鏡と透過型顕微鏡を用いた形態学的解析を行った。3.生物地球化学的解析については、パルマ藻固有のバイオマーカーの探索のため、パルマ藻(T. laevis)の培養株を用いて固有の脂質バイオマーカー成分の検出を行った。その結果、パルマ藻バイオマーカーとして,C21:6 n-アルケンや、C20:5、C22:6脂肪酸、C27-C29ステロイドを同定した。これらは珪藻の培養株の研究においても検出例のある化合物であり、とくにステロールにおいてはC29 β-シトステロールが圧倒的に卓越することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム解析についてはパルマ藻の葉緑体ゲノムの解読が終了し、生理生態学解析については、パルマ藻の殻形成過程の詳細が電子顕微鏡観察により明らかになり、生物地球化学的解析については、パルマ藻特有のバイオマーカーの候補として高分子両極性分子の脂質マーカーが検出できた。以上から、ゲノム解析、生理生態学的解析、生物地球化学的解析ともに順調に進展しており、着実に成果が得られていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム解析については、これまでに次世代シークエンサーにより決定されたパルマ藻ゲノムの全塩基配列データを用いて、引き続きのミトコンドリアゲノムの解析を進め,さらに核ゲノムの解析を進める。得られた知見とこれまでのゲノム解読で得られている珪藻の知見との比較検討を行う。生理生態学的解析については、さらにパルマ藻の珪酸質外被形成機構を進め、パルマ藻の外被形成を伴う分裂過程を明らかにし、珪藻の被殻形成過程と比較する。生物地球化学的解析については、検出された高分子量極性分子の構造決定、Triparma laevis以外のパルマ藻の脂質バイオマーカー分析を行い共通性を検討し、パルマ藻細胞の人工熟成実験による堆積岩中のバイオマーカーの分子形態を検討する。
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