研究課題/領域番号 |
23370048
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
構造生物化学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関根 俊一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特任准教授 (50321774)
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キーワード | 転写 / RNAポリメラーゼ / 転写因子 / 校正 / X線結晶構造解 |
研究概要 |
RNAポリメラーゼ(RNAP)は、転写中に誤った塩基を取り込んだときなどに、一時的にDNA上を後退して「後退複合体」を形成する。この複合体では、RNAの3'末端はDNAから引きはがされており、RNAPは自らRNAの3'末端の数残基を切断して校正(proofreading)を行い、転写を再開することができる。さらに、この校正反応は、広く細菌に保存されている転写因子GreAによって大幅に促進される。後退複合体およびGreAを結合した「校正複合体」の構造解析を行い、転写の校正のメカニズムを明らかにするために、それぞれの複合体を再構成して結晶化し、X線回折データを得ることに成功した。現在構造解析を進めている。 並行して、RNAPの変異体を用いて溶液中でのRNAPの構造変化を検出する系の開発に成功した。これを用いることにより、後退複合体や校正複合体に代表されるさまざまな転写複合体におけるRNAPの構造状態を明らかにすることができる。現在この系を用いて様々な複合体中におけるRNAPの構造状態や構造変化の解析を進めている。 さらに、転写の開始段階では、RNAPはシグマ因子を結合し、それを介してプロモーター特異的に転写を開始する。細菌に感染するファージが産生するタンパク質の中には、このような転写の開始に必要な複合体に結合して宿主の転写を阻害するものがある。このような因子のひとつとRNAPとの複合体の結晶化に成功し、現在X線回折データ収集および構造解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定した「後退複合体」、「校正複合体」、「シグマ因子を含む複合体」のそれぞれについて結晶化に成功し、予想より早く構造解析を進めることができている。また、溶液中でのRNAPの構造変化を検出する系の開発にも成功し、その系を用いた解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき、現在進めている転写複合体の結晶構造解析を推進し、完結させる。立体構造から導かれた仮説を検証するために、RNAPや転写因子の変異体を作成し、機能解析を行う。
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