研究課題
転写の開始段階では、RNAポリメラーゼ (RNAP) は転写開始因子(シグマサブユニット)を結合し、それを介してプロモーター特異的に転写を開始する。細菌に感染するバクテリオファージの多くは、自身がコードするタンパク質を用いて宿主の転写をコントロールすることにより、自らの複製・増殖を達成する。高度好熱菌ファージ由来の転写調節タンパク質であるgp39を結合したRNAP複合体の結晶構造解析に成功した。これにより、gp39は、RNAの排出口の近傍に結合し、シグマ因子のC末端ドメインを大きく再配置することによって、プロモーター認識を撹乱していることが明らかになった。これは、転写阻害の新たなメカニズムを示すものである (Genes Dev. 2014)。RNAを伸長中のRNAP(伸長複合体)は、転写中に誤った塩基を取り込んだときなどに、一時的にDNA上を後退して「後退複合体」を形成する。このとき、RNAの3’末端は鋳型DNAからはがれた状態にあるが、RNAPにはこの3’末端を切断(校正)して転写を再開する機能が備わっている。さらに、この校正反応は、転写因子GreAによって大幅に促進される。本年度は、「後退複合体」およびGreAを結合した「校正活性化複合体」の構造解析を進めた。また、分子内S-S結合を利用してRNAPの構造変化を検出するSMART法を開発し、これらの複合体に適用した。その結果、2種類の複合体間でRNAPのコンフォメーションが大きく異なることが判明し、RNAPの機能はその構造状態の切り替えによって制御されていることをはじめて明らかにした。現在この方法を用いて他の様々な転写複合体中におけるRNAPの構造・機能相関の解析を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定した「後退複合体」および「校正活性化複合体」、「転写開始複合体」について、予定より早いペースで結晶構造解析を進めた。また、溶液中でのRNAポリメラーゼの構造変化を検出するSMART法の開発にも成功し、それを用いた解析も順調に進めている。
現在進めている転写複合体の結晶構造解析を完結させる。立体構造から導かれた仮説を検証するために、RNAポリメラーゼの変異体等を作成し、機能解析を行う。また、SMART法による解析をさらに進展させる。
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Genes & Development
巻: 28 ページ: 521-531
doi: 10.1101/gad.233916.113.
http://www.riken.go.jp/research/labs/clst/struct_synth_biol/struct_biol/supramol_struct_biol/