研究課題
RNAポリメラーゼは、転写の進行にともなって様々な構造状態をとり、他のタンパク質等と様々な複合体を形成する。それらの複合体におけるRNAポリメラーゼの構造状態を調べるために、分子内クロスリンクを用いた検出法(システインペア架橋法)を確立した。高度好熱菌のRNAポリメラーゼの二カ所にシステイン残基を導入し、S-S結合の形成効率をもとに、RNAポリメラーゼが「タイト型」と「ラチェット型」のどちらの構造状態をとっているかを判定できるようにした。これを用いて、代表的な転写複合体におけるRNAポリメラーゼの構造状態を解析したところ、これまで機能のよく分かっていなかった「ラチェット型」コンフォメーションは多くの重要な転写機能に関与していることが示された。このことから、転写の諸機能の制御は、新生RNAや転写因子に依存した、2種類の構造状態の切り替えによって達成されているという普遍的原理が示唆された。転写伸長中のRNAポリメラーゼ(伸長複合体)は、転写エラーを起こしてミスマッチ塩基を取り込んだときなどに、一時的にDNA上を後退して転写を休止する(後退複合体)。このとき、RNAの3’末端は鋳型DNAからはがれた状態にあるが、RNAポリメラーゼはこの3’末端を切断(校正)することにより転写を再開することができる。さらに、GreA等の転写因子は、後退複合体に結合してRNA切断活性を大幅に促進し、転写の校正に重要な役割を果たしている(Gre因子複合体)。これらの複合体の結晶構造解析を行い、RNAポリメラーゼの後退およびRNA切断の構造基盤を明らかにした。RNAポリメラーゼは、後退複合体では「タイト型」を、Gre因子複合体では「ラチェット型」をとっていることが示され、システインペア架橋法による結果を裏付ける結果となった。以上の成果をまとめ、報文として発表した(Mol. Cell 2015)。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mol. Cell
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