平成25年度は、平成24年度までに確立した大腸菌由来のバックグラウンドを抑制したpHtrIIの選択標識技術(1)~(3)を用い、目的「膜」蛋白質の生体内でのNMR検出技術を確立した。また平成24年度に引き続き、課題(4)として大腸菌そのものへの高磁場DNP法の適用に取り組むとともに、新規課題(5)として膜蛋白質の構造変化の検出にも取り組んだ。 選択標識技術(1)は、観測する膜蛋白質のみを安定同位体標識する技術であり、2回膜貫通型蛋白質pHtrIIの大腸菌大量発現系において、培養時に非標識培地を、蛋白質の発現誘導時に安定同位体標識培地を用いることで、pHtrIIのみを安定同位体標識した。帰属や立体構造解析を容易にするため、均一標識試料だけでなくアミノ酸選択標識試料を用いた。選択標識技術(2)(3)は、バックグラウンドとなる大腸菌由来のNMR信号を抑制する技術であり、pColdシステムを用いた低温での発現誘導により、発現誘導後の目的膜蛋白質以外の蛋白質の翻訳を抑制した。課題(4)は、大腸菌への高磁場DNP法の適用であり、研究分担者の藤原らが開発中の高磁場DNP法を大腸菌に適用し、大腸菌膜に発現しているpHtrIIの観測に取り組んだ。また、課題(5)は、大腸菌における光刺激依存的な膜蛋白質の構造変化の検出であり、これを行うための光照射システムを高磁場DNP装置に設置し、光照射実験を行った。これらの実験から、大腸菌そのままでの固体NMR信号の検出に成功するとともに、膜蛋白質間相互作用の検出に成功した。
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