研究課題
糖鎖は,アレルギー反応やウィルス・細菌感染等に深く関与している。本研究の目的は,糖鎖と糖鎖結合タンパク質との複合体のX線結晶解析を行うことにより,糖鎖結合タンパク質による糖鎖認識機構を分子レベルで解明することである。平成25年度は,以下の2つの課題についての研究実績を報告する。(1)糖鎖結合タンパク質ガレクチン9のX線結晶解析:ガレクチン9は,2つの異なる糖鎖結合ドメインが約30アミノ酸のリンカーによりつなげられた構造を持っており,免疫応答において興味深い生理活性を示す。リンカー部分を短くした変異体も野生型と同様の生理活性を持つことから,2つの糖鎖結合ドメインは,リンカーの長さに関わらず,ドメイン間相互作用による安定な相対位置があると考えられる。平成25年度は,リンカー領域を短くした安定型Gal-9変異体(2つの異なる糖鎖結合ドメインを持ち,活性は野生型と同じ)と短い糖鎖との複合体のX線結晶解析に成功した。本構造では,糖鎖結合部位の反対側でドメイン同士が接するというユニークなドメイン会合状態が見つかった。最近,ガレクチンが糖鎖結合部位とは異なる部位でタンパク質と特異的に相互作用することが報告され注目を集めており,本構造も,その一例である。現在,このドメイン会合状態とガレクチン9の機能との関係について検討している。(2)ウェルシュ菌溶菌酵素のX線結晶解析:ウェルシュ菌のファージ由来エンドライシン(Psm)は,ウェルシュ菌の細胞壁ペプチドグリカンを効率よく加水分解する強い溶菌活性を持つ酵素である。平成25年度は,Psm・単糖複合体のX線結晶解析に成功し,Psmのペプチドグリカン加水分解機構を明らかにした。また,分子モデリングにより,Psmの細胞壁ペプチドグリカン結合モデルを提唱した。成果は,学術誌Molecular Microbiology,2014年4月号の表紙を飾った。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mol. Microbiol.
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http://www.kms.ac.jp/~xraylab/report/kaken/index.htm