研究課題/領域番号 |
23370055
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
阪口 雅郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (30205736)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 / シグナル配列 / 小胞体 / トポロジー / オルガネラ |
研究概要 |
膜タンパク質の小胞体トランスロコンを介した膜組み込み機構と小胞体回避に関して下記の成果を得た。 【1】ペルオキシソーム膜タンパク質ABC輸送体D3アイソフォーム(PMP70)の小胞体膜標的化の抑制について、厳密な配列特性を有するモチーフが、何らかのタンパク質因子を介して小胞体組み込み作用を発揮していることを明らかにした。この因子の単離同定を目指して、アフィニティー精製のためのモチーフ融合タンパク質の発現、精製を開始した。【2】小胞体トランスロコンでの新生ポリペプチド鎖の膜透過に対して、膜コレステロールが多面的な阻害作用を示すことを明らかにした。すなわち、コレステロールはシグナル配列によるトランスロコン標的化を部分的に抑制するだけではなく、標的化後のトランスロコンでの正電荷の動きを抑制すること、逆に疎水性配列の動きを促進することを明らかにした。疎水性配列に対する動き促進作用は、コレステロールによるトランスロコンチャネルの横方向への開放の阻害と考えられた。【3】小胞体でのタンパク質膜透過に対して、負電荷を持つリン脂質であるフォスファチジルセリンに結合するタンパク質であるラクトアドヘリンが阻害作用を示すことを明らかにした。特定のリン脂質がトランスロコンの基本的機能に必要であることを示した新奇知見である。【4】小胞体におけるポリペプチド鎖の動きを解析する中で、膜結合リボソームが新生鎖を迅速に遊離するためには、伝令RNAの終止コドンの後方に10塩基以上のRNA配列が必要であることを明らかにした。タンパク質合成に伴った速い膜透過を測定するために資するとともに、リボソームの翻訳停止機構の理解に重要な知見となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
膜タンパク質の小胞体標的化抑制モチーフが特定のタンパク質性因子と相互作用することを確かなものとし、この未知因子の単離同定に向けた道筋を開くことができた。トランスロコン機能に対するコレステロールの多面的な阻害作用を明らかにし、さらに、フォスファチジルセリン結合タンパク質であるラクトアドヘリンの特異的な阻害作用を発見するなど実質的な進展を見ている。また、リボソームとトランスロコンの協働を迅速に測定する実験系の設定も実質的に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
小胞体でのポリペプチド鎖の輸送駆動要因解明に向けて生物物理学的な手法を導入し、本質にせまりたい。特に、最近設定できた、リボソームとトランスロコンの協調を定量的に実測できる系を駆使して、膜タンパク質の膜組み込みに対するリボソームの作用を明らかにする。さらに、ここで発見できた小胞体標的化抑制モチーフに作用する因子の同定を行い、それらの作用機構を明らかにする計画である。
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