研究概要 |
タンパク質NMR解析を、1 mg 以下かつ10 μM以下の濃度で可能にするために、我々が開発してきたMAGICAL法をさらに発展させるとともに、ピンポイントの安定同位体標識技術の開発を試みた。今年度は、以下のような研究成果が得られた。 本年度は、イソロイシンのコドンについてメジャーコドンとマイナーコドンの切り分けを行い、高分子量タンパク質であるマルトース結合タンパク質(MBP, 387残基、分子量42,000)をターゲットとしてアミノ酸残基番号選択的な安定同位体標識を試みた。イソロイシンのマイナーtRNAの遺伝子を用いて、RNAポリメラーゼを用いた転写反応によってtRNAの大量調製を行い、さらにtRNAの機能発現に必要なリシジンの修飾塩基を修飾酵素を用いて導入した。そして、これらの材料をもとに、様々なイソロイシンの部位にアミノ酸番号選択的に15N標識したイソロイシンを組み込み、1H-15N HSQCのNMR測定を行った。すでに、他の方法で帰属されたMBPの1H-15N HSQCスペクトルと比較したところ、狙った部位に正しく安定同位体標識イソロイシンが組み込まれていることを確認できた。以上のことより高分子量タンパク質の1H-15N HSQCシグナルの帰属に本研究の方法が有効であることが示された。 本研究が進めば、従来のNMR解析方法に必要であったタンパク質濃度の1/100以下の濃度でシグナル帰属解析が可能になり、様々な分野への貢献が期待できる。
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