研究課題
炭素数20を超える極長鎖脂肪酸は固有の生理機能を持ち,様々な病態と関連している。我々はこれまで極長鎖脂肪酸伸長サイクルの1段階目を触媒する脂肪酸縮合酵素Elovl1のノックアウトマウスを作成し,炭素数26以上の極長鎖セラミドの減少を伴った皮膚バリア機能不全を示すことを明らかにしてきた。我々は本年度,Elovl1がセラミド合成酵素CerS3と協調して働く時のみ炭素数26脂肪酸を産生するという極長鎖脂肪酸産生の新たな制御機構を見いだした。また,我々は皮膚だけにElovl1が発現するトランスジェニックマウスとElovl1ノックアウトマウスを交配させ,皮膚バリア機能をレスキューしたマウスを作成することに成功した。このマウスに関しては現在解析中である。さらに,極長鎖脂肪酸が蓄積することで発症する副腎白質ジストロフィーに効果があるとされるロレンツォオイルがELOVL1を阻害することを明らかにした。極長鎖脂肪酸伸長サイクルの3段階目を触媒するHacd1の基質特異性については不明であったが,Hacd1ノックアウトマウスの筋肉の脂質組成の分析の結果,多価不飽和脂肪酸含有脂質の量が減少していることを明らかにした。このことからHacd1が多価不飽和3-ヒドロキシアシルCoAを基質とすることが示唆された。極長鎖脂肪酸伸長サイクルの4段階目を触媒するTERの182番目のプロリンをロイシンに置換する変異(P182L変異)が,近年非症候性精神遅滞を引き起こすことが報告された。我々は,この変異がタンパク質の安定性と活性を低下させ,極長鎖脂肪酸伸長サイクルの3段階目と4段階目に影響を与え,炭素数24の極長鎖スフィンゴ脂質の細胞内量を低下させることを示した。これらの結果から,P182L変異による精神遅滞発症の分子機構と極長鎖脂肪酸伸長サイクルにおける新たな調節機構が示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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