研究課題
新合成不良蛋白質は、通常、生成した直後にその異常性が認識され分解系にターゲットされるが、不良蛋白質の認識・分解がうまくいかないと、その毒性から病理的細胞死が誘導される。また、新合成不良蛋白質の分解産物が、MHC(主要組織適合抗原複合体)クラスIに提示される抗原ペプチドの供給源として重要であることも報告されている。このように新合成不良蛋白質の認識・代謝系は免疫応答や神経変性疾患などの防御に極めて重要であるが、その分子メカニズムはこれまで充分明らかにされてはいなかった。我々は最近、BAG6が新合成不良蛋白質を特異的に認識して、これらをプロテアソーム系にリクルートすることを初めて明らかにした。BAG6を抑圧した細胞では、新合成不良蛋白質の代謝に失敗し高率で細胞死が誘導される。一方、MHCクラスI提示される抗原ペプチドは、新合成不良蛋白質の分解産物に由来する。我々は、本申請実験によって、MHCクラスIへの抗原ペプチド供給にBAG6が必須の役割を果たすことを見いだし、免疫系におけるBAG6(別名BAT3)の必須機能を初めて解明した。本申請研究では、これまでの我々の成果を基盤に、BAG6が新合成不良蛋白質を特異的に認識する機構を生化学的に解明する。さらに免疫・神経組織に高発現するBAG6の特徴をふまえ、遺伝子機能抑圧細胞の作成を介してBAG6依存的代謝経路の生理的意義を解明し、得られた知見を細胞内不良蛋白質の新規サーベイランス機構としてその意義を提案することを目的として今後の研究を展開する。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究において、BAG6が「新合成不良タンパク質」を認識するために必要なドメインを絞り込みに成功しつつある。また、これまで知られていたBAG6の標的蛋白質群である「新合成不良タンパク質」に加えて、膜蛋白質のアッセンブリと品質管理にBAG6が必須の役割を果たす事を初めて解明した。
順調に目標に向けた研究が進展しており、引き続き研究計画に従って本申請実験を遂行する。
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PLoS ONE
巻: 6 ページ: e18638
10.1371/journal.pone.0018638
J.Neurochem.
巻: 117 ページ: 504-515
doi:10.1111/j.1471-4159.2011.07222.x
http://www.biol.se.tmu.ac.jp/labo.asp?ID=celche