研究概要 |
脂肪組織中のマクロファージは脂肪細胞のガングリオシド発現量を制御することで脂肪細胞の分化成熟と機能を制御する細胞間ネットワークを形成していることが明らかになってきた。定常状態の腸間膜脂肪組織より調製したSVF (stromal vascular fraction)に存在するレジデントマクロファージを予め除去後に分化させた脂肪細胞では、GM3S遺伝子をはじめとする糖脂質合成酵素遺伝子群の発現が低下し、GM3発現が劇的に減少する共に分化成熟の速度が亢進していた。トランスウェルを用いた分離培養実験の結果、レジデントマクロファージから分泌される液性因子が脂肪細胞の糖脂質発現量を規定していることが判った。次に、成熟脂肪細胞を3種の炎症性サイトカイン(TNF, IL-1, IL-6)各0.2 ng/mlに同時暴露し、インスリン抵抗性を誘導したところ、グルコシルセラミド合成酵素(GlcCerS)とラクトシルセラミド合成酵素(LacCerS)の遺伝子発現は変化しなかったが、 GM3S遺伝子発現は約3倍増加していた。上記の結果およびGM3の増加がカベオラマイクロドメインからインスリン受容体を解離させ、インスリン代謝性シグナルを抑制することを示した我々の研究より、腸間膜脂肪組織においては、レジデントマクロファージが脂肪細胞とガングリオシドの発現制御を介した時間的・空間的な細胞間ネットワークを形成し、1)前駆脂肪細胞の分化制御、2)定常状態における膜マイクロドメインを介したインスリンシグナルなどの恒常性維持、3) GM3発現増加に伴う膜マイクロドメインリモデリングとインスリン抵抗性惹起、等に関与していることが強く示唆される(投稿中)。
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