研究課題
本年度はDXT法におけるpHジャンプ実験法を完成させ、データ収集を行った。同時にデータ解析のためのプログラム開発を行い、すべての実験データを解析中である。中性pHからpH4程度まで効率よく溶液pHをジャンプし、それにより閉構造から開き始める過程を追跡することができた。とくに注目したのはpHジャンプから大きく構造変化をはじめるまでの時間経過、およびその期間におこっている揺らぎである。これと並行して単一チャネル電流によるpH変化におけるゲーティング特性の実験法を新たに開発し、短時間でしかも繰り返し何度でもジャンプできるシステムをほぼ完成させることができた。これと並行してpH変化における単一チャネルでのゲーティング変化を詳細に捉えた。この測定では長時間記録であるため脂質平面膜に単一のチャネルしか存在しないことが証明でき、真に単一チャネルのゲーティング特性を測定していることになる。さらに活性化ゲートが膜内葉脂質成分により制御されることを発見し、その分子機構が全く新しいものであることを解明することができた。ゲート構造の変化について論文をすでに発表し、さらに新しいpHジャンプ法の関する論文を準備中である。
2: おおむね順調に進展している
高輝度放射光施設SPring-8の使用するビームラインの調整が極めて困難であり、また自前で様々な装置を導入する必要があった。またデータの信号雑音比が低いので、回折点を捉え追跡することが難しく、データ解析に膨大な時間を費やすことになった。一方、1分子機能測定法に関しては予想をはるかに超える方法と成果を得ることができ、数報を出版することができた。
現在までの研究の方向性は正しいと判断でき、この方針で最後の年度の研究を進めたい。回折点追跡データを様々な観点から解析し構造変化様式の特徴を抽出する。これらの解析の完成を待って速やかに論文作成に移りたい。平行して進める機能解析などの結果は順次論文発表を進めたい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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