研究課題
本研究では、核磁気共鳴(NMR)法とフロー装置を組み合わせて、蛋白質のアミロイド線維形成過程をリアルタイム且つ原子レベルで明らかにすることを目的とする。NMR法では、サンプル溶液を流しつつ測定すると磁場の不均一性等により大変難しくなる。そこで、2本のPEEKチューブをガラス管の中でうまく配置することで、送液中でも磁場の乱れが少ないフローセルを開発した。まず、卵白リゾチームをモデル蛋白質として用いて、そのアミロイド線維形成過程を500MHzのNMRを用いて^1H 1Dスペクトルを連続測定して追跡した。線維形成は超音波照射下,pH1.6,42℃でNMRを測定しつつ作製した。その結果、線維形成に伴い天然構造由来のピークが20~30時間後急激に減少した。さらに詳しく調べると、線維形成前に変性構造に由来するピークが徐々に上昇することが分かった。質量分析の結果、そのピークは断片化したリゾチームであることが分かった。しかし、形成されたアミロイド線維を調べると、リゾチームはほとんど分解されていなかった。以前の研究により、断片化したリゾチームは自発的に線維を形成することが報告されている。よって、断片化したリゾチームがまず線維を形成して、それを核として全長リゾチームの線維が伸長したと考えられる。また一方で、アミロイド線維を形成するとリゾチームは加水分解されにくくなることが示唆された。加水分解は揺らぎが大きな部位で起こるが、線維を形成すると分子全体がβシート構造を形成するため揺らぎが小さくなると考えられる。このようにアミロイド線維は非常に安定である。今後、さらにオリゴマー形成やプリオンの線維形成機構を明らかにしたい。
2: おおむね順調に進展している
キネティックNMRの一部を使用して、新しい知見が得られている。
今後、超音波照射システムを改良し、より定量的にパワーの制御が行えるようにしたい。また、レーザーによる励起も取り入れる。さらに、中心的テーマであるプリオンの進化過程に応用する。
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