研究課題
プリオンタンパク質の正常型から異常型への構造変換及びその進化メカニズムは、未だ解明されていない。我々は、この現象を原子分解能で観測するため、カイネティック蛍光分光装置、カイネティックCD、カイネティック光散乱装置、高圧NMR、及びその最終形態としてのカイネティックNMRを開発した。カイネティック蛍光では、チオフラビンTをプローブとして、超音波照射に伴うプリオンたんぱく質構造の時間変化を記録した。その結果、数時間から数日の経過で、最終的にはアミロイド形成に到るものの、その途中経過は、尿素濃度と塩濃度に強く依存することが分かった。カイネティックCDでは、同様の傾向が見られたが、30分くらいで緩和するより早期の反応が観測された。このような早期のプリオン蛋白質の構造変換は新発見であり、今後、より詳細な解析をしたい。カイネティック光散乱では、タイムスケールはカイネティック蛍光に近かったが、より早期に一過性の集合体形成が観測された。これはアミロイドのような規則的構造を形成する前に、不規則な集合体形成が一過性に生ずることを示唆している。また高圧NMRでは、全長プリオンタンパク質の圧力変性が観測された。これらの情報を最終的に束ねるカイネティックNMR測定では、極めて興味深い現象が観測された。NMRではタンパク質を構成する原子のひとつひとつが分離して観測できるが、カイネティックNMRから、超音波照射によって徐々にタンパク質のペプチド結合が部位特異的に切断されることが判明した。超音波照射により水溶液中にラジカルが発生する。そのラジカルによって酸化還元反応など様々な反応が引き起こされると考えられる。また、アミロイド形成によりペプチド結合の切断が抑えられることが分かった。この現象の全貌は未だに明らかではないが、プリオンの異常化及びその進化メカニズムの解明に今後、重要な手がかりになる、と考えられる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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