研究概要 |
TATAボックス/イニシエーター等のコアプロモーター構造を認識する基本転写因子TFIIDは、TATAボックス結合タンパク質(TBP)と14種類のTBP随伴因子(TAF1-14)から構成される巨大なタンパク質複合体であり、転写調節因子から受け取った信号を転写量の増減へと変換する上で中心的な役割を果たす。一方、5種類のサブユニット(TAF5, 6, 9, 10, 12)をTFIIDと共有するSAGAはヒストンをアセチル化するとともにTBPのTATA配列への結合を補助する働きを有する。コアプロモーター中にTATA配列を含むストレス誘導性遺伝子ならびにTATA配列を含まないハウスキーピング遺伝子はそれぞれSAGA, TFIIDによって転写されると考えられているが、その詳細については不明な点が多い。 今回我々は、TATA配列を有するPGK1プロモーターを対象とし、TFIIDとSAGAがどのように転写に関与するのかを調べた。その結果、(i)約半量の転写がTATA配列に依存する(残りの半量はTATA配列に依存しない)こと、(ii)TATA配列の有無にかかわらず、約60-70%の転写がSAGA依存的に起こること、(iii)温度感受性taf1株においてもTATA配列非依存的な転写量の低下が見られないこと等が明らかとなった。(iii)は、TATA-less転写がTFIID非依存的に起こり得る可能性を示しており、大変興味深い。また温度シフト後のキネティクスを詳しく調べたところ、TFIIDがSAGA依存的なTATA転写を負に制御していることも明らかとなった。現在、これらの結果をTFIID, SAGAのプロモーター結合の観点からも確認するべく、ChIP法による解析を進めている。
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