研究概要 |
TATAボックス/イニシエーター等のコアプロモーター構造を認識する基本転写因子TFIIDは、TATAボックス結合タンパク質(TBP)と14種類のTBP随伴因子(TAF1-14)から構成される巨大なタンパク質複合体であり、転写調節因子から受け取った信号を転写量の増減へと変換する上で中心的な役割を果たす。一方、5種類のサブユニット(TAF5, 6, 9, 10, 12)をTFIIDと共有するSAGAはヒストンをアセチル化するとともにTBPのTATA配列への結合を補助する働きを有する。コアプロモーター中にTATA配列を含むストレス誘導性遺伝子ならびにTATA配列を含まないハウスキーピング遺伝子は、それぞれSAGA, TFIIDによって転写されると考えられているが、その詳細については不明な点が多い。 すでに我々は、CYC1コアプロモーターを材料とし、独自に開発したポリリン酸蓄積量に基づく遺伝子発現定量システムを用いて詳細なシス配列解析を行い、TATAボックスとは異なる新規コアプロモーター配列(CE)を複数同定することに成功している。今回は、実際に複数のアデニン合成関連遺伝子が、同定したうちの一種を実際のCEとして転写活性化に利用していることを明らかにした。現在、当該CEがTFIIDあるいはSAGAのいずれに依存して転写されているのかを調べるとともに、両コア因子複合体を介した転写開始機構の違いを分子レベルで明らかにするため、詳細な解析を進めている。
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