研究概要 |
全長2mにもおよぶヒトゲノムDNAは人体の設計図であり、ヒストンに巻かれてヌクレオソーム構造を作り、直径約10μmの細胞核のなかに折り畳まれている。最近、代表者はこのヌクレオソーム構造がとても不規則な形で、核内や染色体内に折り畳まれていることを見出した。このことは、個々のヌクレオソームが規則的な構造として縛られず、ある範囲でダイナミックに動ける可能性を示唆する。このようなヌクレオソームの「ゆらぎ」に基づく動きが、遺伝子の発現、DNA複製、染色体凝縮などのゲノム機能に重要な役割を果たしているのではないだろうか。本研究では、このことを実証するため、生細胞内のヌクレオソーム1分子の動きを直接イメージングする技術を開発し、ヒトゲノムクロマチンの細胞内ダイナミクスを明らかにする。本年度は以下の実験をおこなった。 1,低発現PA-GFP-ヒストンH4コンストラクトの作製 PA-GFP-H4の低発現のため、通常用いられるCMVなどのウィルスプロモーターではなく、ヒトの内在性の弱いプロモーターを用いる方が望ましい。このため、ヒトCdk1プロモーターをもちいて発現コンストラクトを構築した。これによりCMVの100分の1程度の発現量に抑えられた。 2,PA-GFP-H4安定発現細胞の作製と観察 本研究では構築したコンストラクトを組み換え部位があらかじめ挿入されたHeLa細胞に、Flp-Inの組み換えシステムを利用して導入し、安定発現細胞株を樹立した。得られた細胞株には、決まったコピー数のPA-GFP-H4が、既知のゲノム部位に挿入されるため、挿入されたコンストラクトのコピー数は一定である。また、サイレンシングの起きにくいため、再現良い観察データが期待できる。さらに、ホルマリン固定したPA-GFP-H4安定発現細胞を用いて、1分子顕微鏡システムの構築および、観察条件設定をおこなった。
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