研究課題/領域番号 |
23370079
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石井 俊輔 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 上席研究員 (00124785)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 転写制御 / メディエーター / シグナル伝達 |
研究概要 |
私達が同定した転写アダプター Shn-2 は、BMPシグナル依存的に核内へ移行し、一群の遺伝子の転写活性化に関与する。また、Shn-2ノックアウトマウスでは、胸腺でのT細胞の分化が、Double-positiveからSingle-positive へのPositive selection の段階で停止している。Shn-2の作用メカニズムを明らかにするため、Shn-2が結合する遺伝子をChIP-on-Chip 法を用いてゲノムワイドに解析した。その結果、Shn-2 は T細胞受容体beta(TCRbeta)遺伝子上に局在することが分かった。また、OVA 特異的 TCRb 遺伝子を発現するトランスジェニックマウス DO11.10 では、endogenousな TCRbeta 遺伝子の発現は抑制されている(allelic exclusion)が、Shn-2ノックアウトマウスでは、allelic exclusion が阻害されていることが示された。これらの結果は、Shn-2 がTCRbeta 遺伝子上に局在し、そのクロマチン構造を制御していることを示唆している。 一方、転写コリプレッサーSki に結合する因子として RBCC(RING finger - B-box -Coiled-coil)モチーフを有する TRIM27 を見出した。TRIM27 が転写メディエーターと結合して、どのような機能を発揮するのかを理解するため、TRIM27 複合体を精製し、構成因子を質量分析法により解析し、脱ユビキチン化プロテアーゼUSP7を同定した。一連の解析の結果、TRIM27は直接USP7をユビキチン化し、USP7がユビキチン化により活性化されることが示された。これらの結果は、TRIM27-USP7複合体の活性が、ユビキチン化/脱ユビキチン反応により制御されていることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Shn-2が胸腺でのT細胞の分化、特にPositive selection を制御するメカニズムは全く不明であった。しかし今年度の研究により、Shn-2 がTCRb 遺伝子上に局在し、allelic exclusion を制御することが示唆された。allelic exclusion はT細胞の分化と密接に関連しており、この知見はShn-2がT細胞の分化を制御するメカニズムを解明する大きなきっかけとなる。また、転写コリプレッサーSki に結合するTRIM27は、脱ユビキチンプロテアーゼUSP7と複合体を形成し、USP7の活性を制御することが示された。この知見はTRIM27の機能を理解する上で、重要な鍵となる。以上のように、転写アダプターが果たす役割を解明するための重要な知見が得られ、研究が順調に遂行された。
|
今後の研究の推進方策 |
TCRb 遺伝子上のShn-2 局在部位近傍のクロマチン高次構造を、3Cアッセイ法により解析し、Shn-2 がTCRb 遺伝子上に局在してクロマチン構造をどのように制御するかを明らかにする。また相同クロモソーム上のTCRb 遺伝子間の相互作用を、FISH法を用いて解析する。このような解析により、Shn-2 が allelic exclusion を制御するメカニズムを明らかにする。またTRIM27の生理機能、特に特異的なシグナル伝達経路との関係を明らかにするため、TRIM27欠損細胞を用いて多様なシグナル応答を解析し、異常を見つけて、その分子メカニズムを明らかにする。
|