研究課題/領域番号 |
23370085
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 裕教 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (50303847)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / シグナル伝達 / 癌 / 脳・神経 |
研究概要 |
細胞運動は様々な疾患と深く関連があるため、細胞の運動性をコントロールする仕組みを解明し、その仕組みに 関わる分子をターゲットとした治療法を確立することが重要であると考えられる。本研究では、細胞の運動性に関わるシグナル伝達経路において中心的な役割を担っているRhoファミリーの低分子量 G 蛋白質とその関連分子群に着目し、今年度は以下の2点の成果があった。 1)Eph受容体ファミリーの一員であるEphA2は、多種のがんにおいて高発現が認められ、がんの進行に関与することが知られている。過去の研究においてがんの悪性度との関連が指摘されているEphA2のS897のリン酸化がEphA2とRhoG活性化因子であるEpexin4との結合を促進することを見いだし、EphA2のS897をアラニンに置換したS897A変異体は、野生型に比べ細胞運動の促進やアノイキス耐性作用が見られず、かつRhoGを活性化できないことが明らかとなった。従って、EphA2のS897のリン酸化が、EphA2とEphexin4の結合および下流のシグナル経路の活性化に必要であり、がんの浸潤・転移につながる、がん細胞の生存や運動といった機能の発揮に重要な役割を果たすことを明らかにした。 2)Rac特異的活性化因子Dock4は、これまでのゲノムワイド関連解析から自閉症、統合失調症、失読症といった神経発達障害の発症と深く関わりがあるリスク因子である可能性を示す報告が相次いでいる。本研究ではDock4が興奮性シナプス後部構造体である樹状突起スパインに局在が見られ、その形成を促進的に制御していることを見いだした。またDock4の新たな結合タンパク質としてアクチン重合制御分子cortactinを同定し、Dock4によるスパイン形成の制御にcortactinとの結合が不可欠であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画としてあげていた、RhoファミリーGタンパク質活性制御因子の結合タンパク質の探索については、本年度までにDock4についてはcortactin、またEphexin4についてはScribbleを同定し、さらに他の結合タンパク質についても現在、その機能の解析が進行しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究に引き続き、これまでに明らかになったRhoファミリーGタンパク質活性制御因子の1つ、Ephexin4の新たな結合タンパク質Scribbleについて、その結合をin vitroや細胞内の免疫沈降の系で確認するとともに、RhoファミリーGタンパク質の活性に対する影響を調ベる。さらには発現が確認されている組織由来の細胞やがん細胞おいてこのEphexin4とScribbleとの結合が細胞の機能やがんの悪性化にどのように関連しているかについて解析していく 。一方、別のRhoファミリーGタンパク質活性制御因子Dock4についても新たな結合タンパク質を同定している 。そこで様々な変異体を作成することによってその結合様式を明らかにするとともに、その結合がDock4の機能に及ぼす影響を解析していく。
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