研究課題/領域番号 |
23370087
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
細胞生物学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
名田 茂之 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (50291448)
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キーワード | メンブレントラフィック / リソソーム / 細胞内情報伝達 |
研究概要 |
後期エンドソーム・リソソームに局在する膜アンカータンパク質p18は細胞内情報伝達にかかわる複数のプロテインキナーゼと会合し、スキャフォールドとして機能することで後期エンドソームを基点とする情報伝達網を形成していると考えられる。平成23年度の研究ではそれらプロテインキナーゼ経路のうち、p18ノックアウト細胞で見られる後期エンドソーム・リソソームの形成・機能不全の原因をMAPK経路とmTOR経路から追及した。MAPK経路のかかわりを調べるために、MEK阻害剤や遺伝子組換えにより作製した後期エンドソームアンカー型のドミナントネガティブMEK1を細胞に発現させて後期エンドソーム・リソソームの形態と機能を調べてみたところ、p18ノックアウト細胞と一部類似した表現型が観察されるものの、特徴的な後期エンドソームの分散分布や形成不全は観察されなかった。mTOR経路のかかわりを調べるために、後期エンドソーム局在型mTORであるmTORC1の阻害剤であるラパマイシンを細胞に与えて調べてみたところ、短時間の処理ではp18ノックアウト細胞のような表現型は見られなかったが、長時間処理を行うことによってp18ノックアウト細胞と同等の表現型が再現されることが判明した。この結果から、後期エンドソーム・リソソームより発信されるmTOR経路の下流で発現が調節されている何らかの遺伝子が後期エンドソーム・リソソームの形態と機能の成熟において必要であることが判明した。またこの結果は、後期エンドソーム・リソソームからのタンパク質リン酸化シグナルが直接的ではなく、間接的にメンブレントラフィックを調節していることを示しており、後期エンドソームmTORシグナルの新たな役割りを証明するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p18ノックアウトによる表現型の原因が、既に報告されている論文などの情報からMAPK経路によるものだと推測していたが、平成23年度の我々の研究からmTOR経路が重要であることが判明した。そのため研究の方向性を修正する必要があったが、それ自体が新たな発見でもあったため。
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今後の研究の推進方策 |
後期エンドソームからのタンパク質リン酸化シグナルの全容を解明する目的に対して、平成23年度の結果から、特にmTOR経路が重要であることが判明した。そのため今後はmTOR経路の下流因子の同定や機能調節機構についてより焦点を絞った研究を行い、当初目的の達成を目指す。
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