研究課題/領域番号 |
23370093
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中川 真一 独立行政法人理化学研究所, 中川RNA生物学研究室, 准主任研究員 (50324679)
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キーワード | 核マトリクス / Xist / X染色体 / ゲノムインプリンティング / Airn / Kcnqlot1 / クロマチン免疫沈降 / クロスリンク免疫沈降 |
研究概要 |
昨年度までの研究において、核マトリクスタンパク質であるhnRNP Uをノックダウンした細胞では、相同染色体上の対立遺伝子の発現(ゲノムインプリンティングによる制御を受ける遺伝子発現)が影響を受けることが明らかとなっていた。つまり、通常では母方由来の染色体から発現しないような遺伝子が、hnRNP Uをノックダウンした細胞においては、父方由来の染色体からもある程度発現するようになったのである。そこで、hnRNP Uがそれぞれの対立遺伝子上における結合を、クロマチン免疫沈降法を用いて解析した。その結果、従来は染色体上に一様に結合していると考えられていたhnRNPUが、ゲノムインプリンティングを受けるような領域においては、発現抑制されている方の相同染色体により多く結合していることが明らかとなった。これらの結果は、AirnやKncqlot1などのゲノムインプリンティングを制御する長鎖ノンコーディングRNAが父方もしくは母方から発現しており、それらの転写産物がhnRNP Uを介して転写部位付近の染色体にシスに集積してクロマチン修飾酵素を呼び込んでいるという結果を強く指示していた。また、X染色体を不活性化する長鎖ノンコーディングRNA XistのhnRNP Uへの結合サイトを同定するためにクロスリンク免疫沈降法を最適化し、エクソン-エクソン結合部位が集中するXistの中間領域にhnRNP Uがより多く結合していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
hnRNPUをノックダウンした際に対立遺伝子特異的な遺伝子発現制御が影響を受けることを確認することが出来た。また、hnRNP Uによるクロマチン免疫沈降で対立遺伝子特異的な結合が検出できるという予想外の成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
従来染色体全体にほぼ一様に結合していると考えているhnRNP Uが特定の対立遺伝子付近の染色体に異なる結合様式を示すという我々の発見は極めて予想外であり、重要であると考えられる。当初の研究計画ではhnRNP U以外の核マトリクスタンパク質についてもノンコーディングRNAの局在を制御するものがあるかをスクリーニングする予定であったが、残り少ない本研究課題の研究実施時間を考慮し、hnRNP Uの染色体結合様式をゲノムワイドで解析する実験に集中してゆく。
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