研究課題/領域番号 |
23370094
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
高田 慎治 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンタ―, 教授 (60206753)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 発生・分化 |
研究概要 |
器官の発生において、いかにして固有のかたちが形成され、特徴的な領域化のパターンが確立するのかということを理解するためには、それらのプロセスに関わる分泌シグナルの空間分布の制御機構を解明することが重要となる。本研究ではWntタンパク質の空間分布に着目し、(1)感度の高い抗体を用いた内在性Wntタンパク質の生理的条件下での空間分布の観察、(2)ライブイメージング技術によるWntの動的挙動の解析、(3)アフリカツメガエル胞胚上皮系を用いたWntの空間局在を制御する因子の探索、の3点の研究を進めている。(1)においては、マウス脊髄神経管においてWnt3aタンパク質の空間局在を詳細に解析し、神経管の管腔側に局所的に集積することを発見した。さらに、このような集積に関わる因子を同定するためさまざまな変異体マウス胚を用いて空間局在の検討を開始した。(2)においては、マウス胚を用いたWnt-3aのライブイメージングを計画しているが、本年度はEGFP-Wnt3aをWnt-3a遺伝子座に組み換えたノックインマウスの作製が完了したことから、次年度以降に生理的条件下においてWntタンパク質の動的挙動をライブイメージングにより追跡することが可能になった。(3)においては、アフリカツメガエル胚を用いてWntの不均一局在を制御する因子の探索も進めており、その候補因子とWnt8タンパク質の共局在を確認することができたことから、次年度においては候補因子が実際にWntの不均一局在を制御するかどうかを検討できるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
発生過程におけるWntの機能についてはすでに膨大な報告があるにもかかわらず、Wntタンパク質そのものの空間分布の詳細な解析は脊椎動物ではほぼ皆無であった。マウスの発生過程におけるWntタンパク質の空間分布を解析したこれまでの結果から、このタンパク質の空間分布がこれまでの通説とは異なり、組織内の局所に局在化するということが示された。この結果は当初の予想をはるかに超える新奇性を含んでおり、今後のさらなる展開が期待できるものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
発生過程の脊髄神経管においてWntタンパク質が組織内の局所に局在化することが示されたことから、この点に特に焦点を当てて研究を展開して行く。平成25年度は特に以下のような研究を進める。 1 Wnt-3aタンパク質の不均一分布に関わる因子の解析: 後脳から脊髄にかけての神経管の背側領域において、Wntタンパク質の不均一な局在が確認されたことから、この不均一分布に関わる因子を検討するため、様々な変異体マウス胚を用いて、抗Wnt抗体による免疫組織染色を行い、Wntの空間分布の規定に関わる要因を検討する。 2 マウス胚内におけるWnt-3aタンパク質のライブイメージング系の確立: 抗Wnt-3a抗体による免疫組織染色は内在性Wntタンパク質の局在化を調べる上で有効であるが、その局在化プロセスを時空間的に解析する上では、マウス胚そのものを用いたWnt-3aのライブイメージングが必要である。そこで、昨年度までの本研究で、EGFP-Wnt3aをWnt-3a遺伝子座に組み換えたノックインマウスを樹立した。本年度はこのノックインマウスを用いて、神経管でのWnt3aタンパク質のライブイメージングを行い、Wnt-3aタンパク質が不均一に分布するようになる過程を明らかにする。
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