研究概要 |
本研究は、節足動物門・鋏角類オオヒメグモの頭部体節形成において観察される縞パターンの移動と分裂に着目し、反応拡散理論の分子的実体の解明を目指している。本年度は研究期間の初年度として、ゲノムワイドな網羅的遺伝子探索を可能にするために、次世代シーケンサーによるオオヒメグモ胚のトランスクリプトーム解析を行い、リード数890,221(平均長433塩基)の配列情報を取得した。アセンブリ解析により、26,405個のコンティグ配列(平均長720塩基)が同定され、オオヒメグモの既知遺伝子との照合により、それらの配列情報がオオヒメグモ胚で発現する遺伝子種全体を幅広く網羅していることが示唆された。また並行して、既存の遺伝子リソースを利用して、胚性RNA干渉法による表現型スクリーニングを行い、ヘッジホッグ遺伝子の発現に見られる縞パターンの移動と分裂に影響が表れる遺伝子を探索した。この探索は、研究期間を通して継続的に行う予定であるが、これまでのところ、ウイングレスシグナル系の構成因子であるアルマジロ遺伝子とアキシン遺伝子に対するRNA干渉で、ヘッジホッグ遺伝子の縞パターンに異常が表れることが明らかになった。このことは、ウイングレスシグナル系がヘッジホッグの縞パターンの移動と分裂において重要な役割を果たしていることを示唆した。今後は、次世代シーケンサーで得られた配列情報も活用しながら表現型スクリーニングを継続的に行うとともに、ウイングレスシグナル系で得られた表現型の詳細な解析を行っていく予定である。
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