研究課題/領域番号 |
23370095
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研究機関 | 株式会社生命誌研究館 |
研究代表者 |
小田 広樹 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 研究員 (50396222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 発生•分化 / 体節形成 / パターン形成 / 細胞間シグナル / 反応拡散 / 節足動物 |
研究概要 |
本研究は、節足動物門・鋏角類オオヒメグモの頭部体節形成において観察されるヘッジホッグ発現波の移動と分裂に着目し、反応拡散理論の分子的実体の解明を目指している。ヘッジホッグは細胞外に拡散するシグナル分子であり、脊椎動物をはじめ様々な動物のパターン形成において重要な役割を果たすことが知られているが、このヘッジホッグのシグナル経路と他の分泌因子によるシグナル経路が拡散を介して互いに制御し合うことによってその発現波の動態が実現している可能性が考えられる。2011年度に引き続き2012年度も、胚性RNA干渉法による表現型スクリーニングを行い、ヘッジホッグ遺伝子の発現に見られる縞パターンの移動と分裂に影響が表れる遺伝子を探索した。その結果、ウイングレスシグナル経路の構成因子であるアルマジロ遺伝子とアキシン遺伝子の機能抑制で、ヘッジホッグ遺伝子の縞パターンに異常が表れることが明らかになった。両者の遺伝子の機能の詳細な解析を進め、アルマジロの機能がヘッジホッグ発現波の伝播に必要であること、そして、アキシンの機能がその発現波の伝播を促進している可能性のあることが示唆された。また、これらの機能解析と並行して、ヘッジホッグとオルソデンティクル遺伝子の発現パターンの時間的変化を多重色蛍光in situハイブリダイゼーション法、コンフォーカル顕微鏡観察法、3次元画像解析法を組み合わせて定量的に解析し、ヘッジホッグ発現波の動的性質を明らかにした。さらに、蛍光タンパク質を付加したヒストンを用いたライブ観察によって細胞分裂と細胞運動を追跡する実験により、ヘッジホッグ発現波が細胞系譜に拘束されずに伝播することが示された。2012年度の解析により、ヘッジホッグ発現波の伝播に、拡散性の分泌因子であるウイングレスのシグナル伝達経路が役割を果たしていることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
RNA干渉による表現型スクリーニングに対して時間と労働量をあまり割くことができなかった。予定していた抗体の作成があまりうまく進まなかった。その代わり、多重色の蛍光in situハイブリダイゼーション法が確立できたので、この方法で代替できる解析を進めていく予定である。予定していたマイクロアレイによる解析も遂行できていないが、アメリカでオオヒメグモのゲノムプロジェクトが進行し、オオヒメグモゲノムの全配列情報が公開されるに至ったので、そのゲノム情報の利用を模索することを優先したい。
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今後の研究の推進方策 |
RNA干渉による表現型スクリーニングは予定よりも進行が遅れてはいるが今後も継続し、ヘッジホッグ発現波の制御に関わる新規因子の探索に努める。オオヒメグモのEST情報及びゲノム情報の活用を可能にするためのバイオインフォマティクスによる情報基盤整備を行う予定である。ウイングレスシグナル経路が関わるヘッジホッグ発現波の制御メカニズムの詳細を解析し、論文としてまとめる予定である。
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