研究概要 |
まず、両共通祖先の配列をより詳細にしらべた。これまでに、古細菌祖先型NDKと真正細菌祖先型NDKの二つの完全祖先型タンパク質の作製に成功している。しかし、一方で祖先配列推定法が祖先アミノ酸残基を一義的には推定できない事もよく知られた事実である。そこでまず、最尤法ならびにBayes法で祖先配列を推定し、比較した。また、アミノ酸組成一定の仮定なしの推定を行った。 1.祖先型NDKアミノ酸配列の推定法の詳細 CLUSTAL X(Thompson,1997)を用いたアライメントを行い、次いで立体構造を考慮したアライメントの修正を行った。アラィメントが曖昧な部分をGBLOCKS(Castresana,2000)で配列を切り出す。(最尤法による推定)このデータを用いて、Tree Puzzle(Schmidt, et al.2002)とCODEML(PAMLパッケージ中、Yang,1997)を用いて最尤系統樹を作成した。得られた系統樹を用いてCODEMLで祖先配列を推定した。(Bayes法による推定)最尤法で用いた配列データを用いて、MrBayes(Ronquist, F., Huelsenbeck 2001)、PhyloBayes(Lartilltt and Philippe 2004, 2006 ; Lartillot et al. 2007),nhPhyloBayes(Blanquart and Lartillot 2006, 2008)を用いてBayes法による系統解析を行った。nhPhyloBayesは進化の過程でアミノ酸組成が変化可能な進化モデルに基づく解析が可能なプログラムである。それらの解析から得られた系統樹を元に,祖先配列の推定を行った。 2.遺伝子合成、タンパク質発現精製と活性、耐熱性測定の詳細 推定した遺伝子のアミノ酸配列を大腸菌の高使用頻度を用いて逆翻訳した。ただし、繰返し配列はPCRエラーの要因となるので、その部位のコドンは第二の高頻度コドンと交換した。PCRにより遺伝子合成を行った(Hoover and Lubkowski 2002)。祖先型遺伝子を、発現ベクターに導入し、発現した。 3.耐熱性は機能面と構造面の両面から測定した。機能面は一定温度での熱処理後の残存活性を測定したことから評価した。構造面では、円偏光2色性(CD)測定から、タンパク質二次構造を評価した。温度を一定速度で上昇させ、タンパク質変性にともう二次構造の消失をCDで評価した。
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