研究課題/領域番号 |
23370098
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
池尾 一穂 国立遺伝学研究所, 生命情報・DDBJ研究センター, 准教授 (20249949)
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キーワード | 眼の起源 / 分子進化 / クラゲ / 渦鞭毛虫 / NGS / 比較ゲノム / 遺伝子発現 |
研究概要 |
感覚器の起源と進化を明らかにすることを目的に眼を例にとり比較進化学的な解析をおこなう。レンズ眼の起源と進化を理解することは、生物における表現系や形態・機能の多様化を考える上で重要であるばかりでなく、生命における他者の認識にまで至る、高次機能の理解にも関わるものである。神経系が未発達にもかかわらずレンズ眼を有する枝足クラゲや単細胞にも関わらずレンズを有する眼点を持つ渦鞭毛虫を対象として、哺乳類に代表される高度な神経系と連携している眼を比べることにより、遺伝子レベルで、このような複雑な感覚器がどのように出現したかという感覚器の進化と、感覚器からの情報を処理する神経系の進化上の関わりを遺伝子レベルから明らかにすることを目指す。上記目的を果たす為に、渦鞭毛虫、エダアシクラゲを原始的なレンズ眼を持つ生き物の代表とし、ミズクラゲをその対象に、眼の形成に関わる遺伝子の探索を目指して研究を進めた。本年度は、上記の三種に関してサンプルの収集を進め、特に眼をもたないミズクラゲに関しては、オプシン遺伝子を中心に眼に関わる遺伝子を探索し、どの部位で発現しているかをin situで調べた。また同時に、配列解析により、どのような光受容特性を持つかの解析を行っている。一方エダアシクラゲに関しては、大規模な遺伝子発現解析の為に、培養環境の拡大をおこなった。これにより、十分なサンプルの確保が可能となった。本年度は、試験的にRNAseqをおこなった。また、様々なデータベースを利用して、眼の形態形成に関する遺伝子発現ネットワークモデルを作成した。これは、従来の知見のみならずいくつかの遺伝子の寄与が示唆されるものとなった。今後、これらの遺伝子を含めて、進化過程の中で眼の複雑化がどのように行われてきたかをより精密に調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子発現モデルの作成や、いくつかの遺伝子に関する機能解析に関しては予定通り進捗している。RNAseqについては、サンプルの増殖が本年度はよくなく、材料集めに手間取った。しかし、暖かくなれば、より大規模での培養と野外収集を行うことにより、材料不足をカバーできる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度以降は、大規模シークエンシングを、新たに研究所に導入されたシークエンサーを用いて独自に行う事により効率化する。また、材料であるクラゲに関しては、現在、増え始めており問題なく昨年度の分をカバーできると考えている。これに基づき、計画通り、クラゲを中心にレンズ眼の起源と成立過程を大規模配列データ比較に基づき明らかにしていく。また、必要に応じて、比較対象の種を増やし、より詳細な眼の多様化と起源に関する比較研究を進める計画である。
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