研究概要 |
比較ゲノム解析として、以下のふたつを行なった。(1)哺乳類のなかで、ヒトが属する霊長類と齧歯類のゲノムをそれぞれ2種ずつ比較し、系統特異的に高度に保存されている非コード領域を多数発見した。それらの周辺に位置するタンパク質コード遺伝子は系統ごとに異なっており、またそれらの機能は、肉眼形態を発生により生じるのにかかわる転写因子が多かった。この成果はTakahashi & Saitou (2012; Genome Biology and Evolution)に発表した。(2)ヒトが属する脊椎動物の共通祖先で生じたと考えられている2回のゲノム重複により生じた非コード領域の重複領域がオーソログとして全脊椎動物で保存されており、しかもパラログ間でも保存されているものを大規模ゲノム解析により309個を見いだした。その1/3は脳での遺伝子発現調節にかかわっていた。この成果はMatsunami & Saitou (2013; Genome Biology and Evolution)に発表した。 トランスジェニック実験としては、哺乳類特有の遺伝子間領域保存配列として、SINE由来の配列について機能解析を行った。この結果、前脳でのfgf8遺伝子発現制御に関与する因子であることがわかり、詳細な機能解析を行ない、Nakanishi, Kobayashi, Suzuki-Hirano, Nishihara, Sasaki, Hirakawa, Sumiyama, Shimogori, & Okada (2012; PLoS ONE)に発表した。また、有胎盤類の特徴的な機能の一つである胎盤発生に関与するHOXA13遺伝子の制御配列が保存配列としてシーラカンスにも見いだされることを発見し、現在その祖先機能の解析を進めている。
|