研究課題/領域番号 |
23380001
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阿部 純 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00192998)
|
研究分担者 |
山田 哲也 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70374618)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 開花 / ダイズ / フィトクローム / 光周性 / 伸育性 / 遺伝解析 / 分子機構 |
研究概要 |
開花様式は、子実作物の生産性や適応性を規定する重要な要素であり、その分子生物学的な制御機構がシロイヌナズナやイネを中心に明らかにされつつある。しかし、ダイズにおける開花の分子制御機構の理解は非常に限られている。本研究は、ダイズの感光性に関与するフィトクロームA遺伝子(E3およびE4)、フロリゲンを支配するFLOWERING LOCUS T(FT)遺伝子、伸育性を支配するTERMINAL FLOWER 1(TFL1)遺伝子などに着目して、ダイズにおける開花関連遺伝子の発現ネットワークを構築し、その環境応答を明らかにすることを目的としている。本年度の実施計画では、1)前年度の結果をもとに作出された新規の非感光性遺伝子が分離する交雑F2集団を供試して、非感光性に関与するQTLを同定し、ゲノム情報等をもとに候補遺伝子を特定すること、2)遺伝子発現解析を継続し、ダイズの開花に関与する主要な遺伝子の発現ネットワークを構築すること、3)半無限伸育性遺伝子(Dt2)が分離する交雑後代を用いてDt2遺伝子近傍の微細染色体地図を作出することであった。分離集団の解析から、新規に見いだされた非感光性に関与する二つのQTLを見出した。一つはJ連鎖群に位置し、その近傍にはFT遺伝子の一コピーであるFT5aが存在した。FT5aのコード領域の塩基配列を親系統で解析した所、コード領域には塩基多型は見いだされなかった。もう一つはG連鎖群に位置し、Dt2遺伝子の近傍にあった。遺伝子発現解析から、新規の非感光性系統では、PHYA欠損型系統に比べて特定のFUL遺伝子ならびにSPL遺伝子が過剰に発現しており、非感光性獲得の原因としてFUL/SPLの関与が示唆された。Dt2遺伝子のファインマッピングは、他の感光性遺伝子の分離により、容易ではなかった。現在、ゲノム情報から、候補遺伝子の特定を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画当初の目的はおおむね達成している。Dt2遺伝子のマッピングについても、用いた交雑組み合わせで他の感光性遺伝子が分離したことから、表現型の特徴づけが困難になり、詳細な位置情報を得ることはできなかったが、ゲノムシークエンス情報を基に候補遺伝子の特定を進めることができた。新規非感光性に関与する遺伝子として、二つのQTLに対応する候補遺伝子が特定でき、さらに、発現解析からそれらとは異なる遺伝子の存在が示唆された。これらの遺伝子の特定が進めば、新たに見いだされた非感光性の機構の全体像を理解することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
新規に見いだされた非感光性に関与するQTLの原因遺伝子として特定されたGmFT5a遺伝子の遺伝子構造を、特にプロモーター領域に注目して明らかにする。同時に、FULの発現に関与する開花遺伝子の塩基配列比較を進め、新規非感光性の全体像を理解する。FUL遺伝子6コピーの塩基配列ならびに発現様式を明らかにし、それらの機能解析を進める。得られた結果を基に、ダイズの開花に関与する主要な遺伝子の発現ネットワークを構築する。
|