研究課題
本研究ではイネにおける複数の雄性不稔細胞質(LD-CMSなど)と稔性回復遺伝子(Rf2など)を材料として、ミトコンドリアの雄性不稔原因遺伝子の特定、稔性回復機構,および、ミトコンドリアから核へのレトログレードシグナル伝達経路の解明を行い、ミトコンドリアゲノムの異常から花粉稔性の消失までの全容(雄性不稔発現機構および稔性回復機構)を明らかにすることを目的としている。1.ミトコンドリアのCMS原因遺伝子解析:LD型CMSの原因遺伝子について詳細に解析した。この結果、LD型CMSのミトコンドリアにはBT型CMSと類似したL-orf79が存在し、atp6と共転写されること、ORF79ペプチドが蓄積していることを明らかにした。Rf2を過剰発現させた形質転換カルスを用いた実験より、RF2が存在するとatp6-orf79 RNAが特異的に転写後分解され、ORF79ペプチドが翻訳されなくなることを明らかにした。これより、LD型CMSの原因遺伝子はorf79であり、Rf2はそのRNAを減少させる作用があると考えられた。2. 稔性回復機構の解析:クローニングしたRf2はグリシンリッチプロテインをコードし、他の因子と結合して働くと予想された。結合相手をYeast-Two-Hybrid法で探索したところ、4種類のcDNAを含むクローンが選抜された。このうち、ユビキチンドメインを持つタンパク質R2IF2が、大腸菌で発現させた組換えタンパク質のin vitro結合実験において、RF2タンパク質と結合することが示された。また、R2IF2とGFPの融合タンパク質の細胞内局在を観察することにより、ミトコンドリアに局在することを明らかにした。ミトコンドリアの品質管理およびユビキチンプロテアソームシステムが関係する可能性も考えられた。
2: おおむね順調に進展している
LD型CMSについて、ミトコンドリアのCMS原因遺伝子と稔性回復機構の解析が当初の予定通り進展した。3年間の研究期間に充分な研究成果が得られる目処がたった。
これまで報告された稔性回復遺伝子のほとんどはRNA結合タンパク質をコードしているが、本研究のLD-CMS/Rf2の研究を推進すれば、新奇の稔性回復システムを明らかにすることができる。稔性回復遺伝子産物は、未知のタンパク質と稔性回復複合体を形成してRNAの転写後制御に関与していると考えられる。今後、この複合体に含まれる因子を明らかにする計画である。CW-CMSミトコンドリアに由来するレトログレードシグナルがどのようにして生じるかを明らかにするために、CW-CMSに対する新規稔性回復系統を用いて、CMS原因遺伝子の探索を行っている。同一の細胞質に由来する異なる回復系統を用いたミトコンドリア遺伝子の解析および、レトログレードシグナル依存的な発現を示すことを明らかにした稔性回復遺伝子RF17のプロモーター領域に結合する因子を単離する実験を行うことで、突破口を開く計画である。
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