研究課題/領域番号 |
23380013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 眞理 九州大学, 農学研究院, 教授 (60091394)
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研究分担者 |
湯淺 高志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40312269)
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キーワード | 栄養転流 / オートファジー / 老化 / 糖転流 / ダイズ / ササゲ |
研究概要 |
ササゲ(Vigna unguiculate (L.) Walp.)はアフリカを起源とするマメ科作物であり、サハラ砂漠南部のサバンナ・サヘル地域であるナイジェリアやニジェールなどでは貴重なタンパク源となっている。ササゲは子実肥大期に乾燥を受けても収量の低下が小さい。乾燥ストレスに伴い土壌含水率が低下し、それに伴いササゲは光合成速度が低下し、処理後3日目には光合成はほぼ停止した。また、植物体内の非構造性炭糖(NSC)の含量では、光合成が停止した処理後3日目以降で子実のNSCのみ増加し、莢、花柄、葉、葉柄、茎、根のNSCが乾燥区で処理後大きく減少した。これらのことから、乾燥ストレスによって子実以外のすべての器官が糖のソース器官として働くことが明らかになった。 収量維持メカニズムの一つとして乾燥に応答した急速な葉の老化と葉から子実への速やかな栄養の転流について検討した。オートファジー(autophagy;自食作用)というバルクなタンパク質分解系を用い、ササゲの乾燥ストレスに伴う葉の老化促進のメカニズムにおけるオートファジーの役割を解析した。ATG8i</I>(オートファジー関連遺伝子)の発現量は、コントロール区に比べて乾燥区では早期に増加し、乾燥+摘莢区では増加しなかったため、乾燥ストレスによるオートファジーの促進と、シンク器官の除去によるオートファジーの抑制が示唆された。また、芽生えをスクロース処理したところ、の発現は抑制され、ATG8iタンパク質自体は増加したこれらのことから、糖はオートファジーを抑制するシグナルの一つであり、乾燥+摘莢区ではシンク器官の除去によって糖がササゲの植物体に蓄積しオートファジーが抑制されたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マメ科作物の収量増大を目指したササゲとダイズの栄養転流メカニズムにおける糖の転流とオートファジーの役割について、遺伝子発現、糖および窒素量、糖シグナルの関与など興味深いデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在,植物の糖転流を制御するSUT1およびタンパク質分解・老化調節に関わる栄養シグナルの分子メカニズムについてTOR抗体、ATG13抗体,エチレンシグナル分子抗体、ABA応答転写因子抗体を作成したので、植物のオートファジーを制御する植物ホルモンシグナルの解明を進行中である。 ダイズやササゲの分子レベルの機能解明や拡大するゲノムデータを有効活用する予定である。
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