研究課題/領域番号 |
23380016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下村 彰男 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20187488)
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キーワード | 文化的景観 / 環境政策 / 景観管理 / 支払意志額 |
研究概要 |
各地で実施され始めている自然環境を保全し管理する新たな動きとして、受益者支援型の景観管理費用に関する現行動向について分析・整理を行った。広範に事例検索を行い、その中から活動状況や資金の徴収・使用の流れに関する情報が比較的入手しやすい52事例を抽出し、資金の徴収方法の観点からパターン分類を行った。その結果、来訪時のアメニティ享受等の受益が明確なものと、基金特典のように広く受益者を設定するものとに大別され、更に徴収方法によって「税金」「直接協力金」「上乗せ協力金」「商品購入」「基金」の5種の区分を抽出した。そして、タイプ別に活動の目的や具体的な事業内容、組織形態や資金規模等について分析し、得失について整理した。 また、地域における文化的景観の個性(景観の特徴)把握に関しては、特に沿岸部の漁業集落に着目して調査を実施し、把握手法の検討を行った。その結果、特徴抽出に際しての着目点については、まちの立地基盤である海から陸域にかけてめ地形と、集落、生産作業用地、耕作地、森林、草地などの土地利用との関係、そして集落構造に大きな影響を与える社寺を中心とした宗教施設の立地と、地形との関係あるいは集落そして農地や漁場等の生産地との位置関係に着目し、それらを歴史的に調査・分析することが有効であることが検証された。 そして次年度以降の準備として、ケーススタディ調査地の一つである由布院において、景観特性抽出および景観保全管理協力金調査を実施するための、調査地との調整および景観の特徴抽出の可能性についてプレ調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地域における文化的景観の個性(景観の特徴)把握に関して、今年度は、特に沿岸部の漁業集落を重点的に調査した。これは東日本大震災の復興支援に役立てることを想定したためである。そのため沿岸部に関しては充実した検討ができたものの、汎用性という点では、より広範なケースでの検討が積み残しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度積み残した、地域における文化的景観の個性把握の広範なケースを視野に入れての検討・整理を進めるとともに、ケーススタディ調査地での資源管理に関わる支払意志額調査を進め、地域が持続的に資源管理していくための仕組みの構築検討を行い、モデルとして提示する。
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