研究概要 |
ニホンナシ自家不和合性における自他認識反応はS遺伝子座上の雌しべ側と花粉側S遺伝子産物間の相互作用によって起こる. 雌しべ側S産物であるS-RNaseは非S特異的に花粉管内に取り込まれる. 自己S-RNaseは不和合花粉管のrRNAを分解し, 花粉管伸長を停止させる. S-RNase周辺領域には, 花粉側S遺伝子候補となるF-boxタンパク質遺伝子(PpSFBB)がクラスター(群)を形成していることから, PpSFBB群が分担して非自己S-RNaseを識別し, ユビキチン化していると推測されている. S-RNase周辺領域に座乗するPpSFBB群を掌握するため, 本年度もS-RNaseのBACコンティグの拡張した. S4-RNaseのBACコンティグは上流約404kbと下流約450 kbまで拡張され, 拡張領域に新たな4個のPpSFBB4を見出し, S4-RNase周辺領域には少なくとも10個のPpSFBB4が座乗することが明らかになった. PpSFBB4とPpSFBB2の推定アミノ酸配列の比較から、6対が90%以上の同一性を示し, 各対のPpSFBBは同一の非自己S-RNaseを識別すると考えられた。一方, 受粉6時間後に不和合花粉管先端部の微細構造の崩壊が透過型電子顕微鏡により観察されたことから, 受粉6時間後に不和合反応が起こっていることが示唆された.花粉管に取り込まれたS-RNaseの挙動を解析するため, エンドゾームを可視化できる免疫電顕用固定法を開発した. in vitro花粉発芽系における非自己S-RNaseのユビキチン化を解析するための準備段階として, ‘長十郎’と‘二十世紀’の花柱からS3-とS4-RNaseを精製した.
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今後の研究の推進方策 |
S2-とS4-RNase周辺領域のBACコンティグ上にそれぞれ10個と12個のPpSFBBを見出しているが,サザンブロット解析の結果, さらに外側にもPpSFBBが座乗することが示唆されている.そこで, PpSFBBをプローブとしたサザンブロット解析でバンドが検出できなくなるまでS-RNase周辺域のBACコンティグを拡張し, 新規PpSFBBをクローニングし, S-RNase周辺領域に座乗するPpSFBB群を網羅する. 受粉6~12時間後の不和合花粉管先端部を透過型電子顕微鏡で観察し, 不和合花粉管先端部微細構造が崩壊していく過程を組織学的に明らかにする. S-RNaseとnon-S-RNaseの花粉管への取り込みと花粉管内挙動を抗S-RNase抗体を用いた免疫電子顕微鏡法により解析する. 非自己S-RNaseのユビキチン化に関してはin vitro花粉培養系を用いた実験方法を検討する.
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