研究課題/領域番号 |
23380021
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
杉山 信男 東京農業大学, 農学部, 教授 (30012040)
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研究分担者 |
峯 洋子 東京農業大学, 農学部, 准教授 (70282704)
河鰭 実之 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10234113)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | QTL / トマト / 出葉角度 |
研究概要 |
草型に関わるQTLを葉の大きさ,垂線長,屈曲程度,出葉角度,節間長,草冠サイズに関わるQTLに分解し,これらQTLの相互関連を明らかにするため,栽培種とSolanum pimpinellifoliumの組換え近交系111系統を用いて春と秋にQTL解析を行った。葉長に関わるQTLは第1,2,3,10染色体にそれぞれ1,2,2,2個,葉の下垂角度に関わるQTLは第2,4,12染色体にそれぞれ2,1,4個,葉の垂線長に関わるQTLは第3,7,12染色体にそれぞれ4,1,3個,草冠サイズに関わるQTLは第4と第12染色体に各1個検出された。第3染色体上の葉の垂線長に関わるQTLは春と秋の両方で検出され,同じ領域には葉長に関わるQTLが座乗していた。第12染色体上の葉の下垂角度に関するQTLは春と秋の両方で検出され,同じ領域には草冠サイズに関わるQTLや葉の垂線長に関わるQTLがクラスター状に座乗していた。これとは別に,幼植物を用いて窒素利用効率(乾物重/乾物重当りの窒素濃度)についてQTL解析を行ったところ,窒素利用効率に関わるQTLは第2,3,10,12染色体に座乗しており,このうち第3染色体の窒素利用効率に関わるQTLは,葉長や垂線長に関わるQTLがクラスター状に座乗する部位と同じ位置に座乗していた。窒素施用量を変えて栽培種とS. pimpinellifoliumを栽培し,RNA-Seq法によりmRNAの発現差解析を行った。発現差がみられた681種の転写物を発現プロファイルに基づいて12クラスターに分類したところ,第6クラスターに分類された転写物量は栽培種では窒素施肥に反応して大きく上昇したが,S. pimpinellifoliumでは反応の程度が小さかった。また,第3染色体に座乗するグルタミン酸合成酵素がこのクラスターに含まれることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
草型に関わるQTLを葉の大きさ,葉の水平距離,草冠サイズ,出葉角度に分解し,それら要因に関わるQTLを見つけることができた。また,窒素利用効率に関わるQTLを見出し,窒素利用効率に関わるQTLと草型に関わるQTLとが関連している可能性を示した。さらに,草型や窒素利用効率に関わるQTLの中には,窒素施用量によって発現が異なるQTLがあることも明らかにした。これらの点で研究は順調に進んでいるが,草型や窒素利用効率に関わるQTLがクラスター状に座乗している部分だけを含む染色体断片置換系統の作成が予定より遅れている。これは,染色体断片置換系統を育成するために戻し交配を行っているが,栽培時期の関係で採種量が少なく,単一染色体断片を含む個体を十分に作りだせなかったことが原因と思われる。現在,新たに戻し交配を行っているが,育成系統を用いて群落状況で受光量を比較する実験の実施は早くても今年末になる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
戻し交配を繰り返して染色体断片置換系統の育成を進め,草型に関わるQTLがクラスター状に座乗している第3染色体あるいは第12染色体の断片だけを含む置換系統を育成する。育成した断片置換系統と栽培種を実際の栽培条件下で栽培し,群落条件下における両系統の受光量の違いを明らかにする。現在,断片置換系統の育成に精力を注いでいるが,育成が間に合わない場合には,いくつかの断片を含んだ置換系統を用いて実験を行う予定である。また,組換え近交系111系統を異なる窒素施肥条件下で栽培し,播種後1ヶ月後に葉からRNAを抽出し,候補遺伝子についてリアルタイムPCRを行い,mRNAの発現量を測定する。得られた測定値を用いてeQTL解析を行い,eQTLと草型や窒素利用効率に関わるQTLとの関連を調べる。
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