これまで栽培種と近縁野生種Solanum pimpinellifoliumの組換え近交系BC1F7の111系統について、106マーカーを用いて作成した連鎖地図を利用し、QTL解析を行ってきたが、マーカー間の距離が大きく、QTLの位置を正しく推定できていない可能性が考えられた。そこで、マーカー数を162に増やした連鎖地図を作成し、再度QTL解析を行った。次に、栽培種と近縁野生種のF1に栽培種を2回戻し交配したBC2F1の256系統から31系統を選抜した。この系統の中から、第3または第12染色体の草冠サイズに関わるQTLをカバーする領域に近縁野生種の染色体断片を持つ系統を選抜したが、目的とする領域以外に5か所、野生種の断片が残っていたので、さらに戻し交配し、断片数を減らした系統を選抜した。これらの系統は目的とする領域がヘテロであるため、その自殖系統を播種してQTL領域が近縁野生種ホモになった固定系統を選抜した。栽培種との比較試験を行うため、この固定系統の採種を行っている。昨年度行ったmRNAの発現差解析から、転写物量が栽培種では窒素施肥に反応して大きく上昇するが、近縁野生種では低窒素でも転写産物量が高く維持される遺伝子群が認められた。このクラスターには第3染色体に座乗するグルタミン酸合成酵素、硝酸トランスポーター、グルタミン酸デカルボキシラーゼの遺伝子が含まれることが明らかになった。そこで、組換え近交系111系統を異なる窒素施肥条件下で栽培し、処理後15日目の葉からRNAを抽出してリアルタイムPCRを行った。しかし、グルタミン酸合成酵素遺伝子のmRNA発現量についてのeQTL解析でQTLは検出できなかった。現在、硝酸トランスポーターとグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子についてmRNAの発現量を測定している。
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