研究課題/領域番号 |
23380023
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
石川 雅也 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物生産生理機能研究ユニット, 上級研究員 (90355727)
|
キーワード | 植物 / 果樹 / 耐寒性 / 凍結過程 / 非破壊可視化 / 赤外線 / 水 |
研究概要 |
水分の豊富な植物組織にとって凍結は最も危険なストレスである。果樹等の高耐寒性植物がどのようにうまく制御しながら凍るか、重要な機構にもかかわらず、詳細は良く判っていない。本機構解析のため、本年度は主に、植物の素早い凍結過程を非破壊可視化できる高感度のデジタル赤外線サーモビュアを利用した越年生組織の凍結挙動の可視化法の開発を行った。 組織の凍結の際の温度上昇を赤外線カメラで動画として捉えるのが、赤外線サーモビュアによる解析法で、近年デジタル化され、感度も改善したため、冬季の材料等含水率の低い材料でも素早い凍結過程の可視化解析が可能になった。23年度はまず、赤外線カメラを設置して試料を精度良く冷却できる冷却槽を自作した。本装置を用いてサーモビュアにより凍結過程を録画後、画像解析を行うのであるが、以下の点について検討した画像上の試料温度の適正化するため、対象物の温度を熱電対で測定、比較し、最適な反射率を選択した。生画像、特定の対照画像との差画像(Referential)、隣合う画像同士を引き算する方法(Differential)の3つを比較した。自動Normalization像と絶対温度表示法などについて、検討した。前者では0.1℃程度の微弱な凍結を捕えることができた。枝の凍結過程においても、強度の異なる凍結が連続して起こるため、解析時に、発熱強度に応じた画像の取得間隔を選択することが最も重要であった。最も感度良く解析できたのは、Differential画像による解析で、微細で緩慢な凍結から、急速な木部の凍結伝搬まで詳細に捕えることが可能であった。画像表現法としては、一定間隔取得画像を連続して並べる方法が有効であった。試料の各ピクセルの温度履歴を表示させ、従来型熱分析も画像から行うことができた。 同様の画像解析処理は通常の冷凍顕微鏡で取得したデジタル画像においても有効であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前の予備実験等の結果、赤外線サーモビュアによる、より正確な観察、解析を行うためには、実験に使用する観察条件を詳細かつ広範に設定する必要が生じたことから、事前準備と本実験に大幅な期間延長が必要となり、繰越申請を行い、研究期間を延長した。その結果、順調な成果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
1.今回、新規開発した赤外線サーモビュアを用いた新規可視化法を用いて、果樹等の越年生植物組織における凍結挙動の動態の非破壊可視化解析を進める。特に、細胞外凍結タイプの耐寒性をしめすブルーベリー等の越冬枝等の凍結開始と凍結伝搬、凍結機序の観察、解析を進める。 2.凍結開始や凍結挙動の支配因子の同定と特性解析を進める。特に、組織の凍結開始を支配するin vivo氷核活性の分布と特性解析(ブルーベリー枝)を進める。 3.他の手法を用いた越年生植物組織における凍結挙動の新規可視化法の開発を進める。 特に、高性能干渉計や冷凍顕微鏡を利用した凍結開始部位の解析やCryo-SEM解析(凍結状態で組織を割断し、SEMで氷や細胞を観察する方法)を検討する。
|