高分解能MRIを用いてアメリカハナミズキ花芽の凍結挙動を可視化解析した。MRI画像にもDifferential画像処理を導入すると、各温度間で凍結した組織や部位を画像化することが可能になった(これまでは未凍結組織だけが可視化可能だった)。Sakai(1979)のDTAによる解析報告と異なり、小花が過冷却しているのではなく、葯と胚珠が一個単位で安定して過冷却して耐寒し、過冷却が破れて凍結するとその組織単位丸ごと凍害を受けることがわかった。それ以外の苞、花弁、萼、胚珠以外の雌蕊組織はいずれも細胞外凍結しており、苞と萼はIce sinkとして機能していた(顕微鏡観察の結果)。このように、配偶体世代とその周囲の組織だけ(葯と胚珠)が過冷却する新しい花芽の凍結様式が発見された。過冷却状態で未凍結の葯と細胞外凍結する花弁との間を結ぶ花糸のいずれかの部分に、葯への凍結の侵入を阻止するIce blocking barrierが存在すると考えられた。 ウメ花芽及び枝の凍結挙動について赤外線サーモビュアを用いて解析したところ、まず花芽の芽鱗片先端から凍結が開始され、やがて枝に凍結が伝播することが判明した。一方、花芽の雌蕊が凍結して選択的に被害を受ける様子も観察された。これは冬季に咲くウメ花の野外での雌蕊の選択的凍結障害とよく一致した。雌蕊の凍結潜熱放出量は大きく、含水率が高いと予想された。 ブルーベリーの皮層部から氷核活性を可溶化する手法開発を行った。50種類の条件の中で2種類の界面活性剤を利用すると効率よく可溶化されること(‐8℃程度)、透析による除去がそれ以降の活性の保存に重要であることが判明した。可溶化された氷核活性に対する様々な処理(温度、凍結保存処理、薬剤、酵素処理等)の効果を調べ、詳細な物質的特徴を解明した。現在、当該物質の単離精製やIntact組織での存在状態解析等を行っている。
|