研究課題
病原菌感染時に植物の免疫応答を亢進することで耐病性を付与する植物免疫活性化剤は、耐性菌の出現回避や圃場の微生物相の保全等のために有効と考えられる。しかし、このような化合物は、サリチル酸(SA)経路に作用する数種しか報告されておらず、適用範囲も限定的なのが現状である。タバコBY-2細胞に卵菌由来のタンパク質性エリシターcryptogeinを処理するモデル実験系を用いて、植物免疫情報伝達系や過敏感細胞死(PCD)誘導機構の研究を進めて来た。その結果、NADPHオキシダーゼを介したROSの積極的生成のパターンと、遺伝子発現やPCDとの間に相関関係を見出し、それを指標とした簡便な植物免疫活性化剤の選抜系を開発した(PCT出願済)。本手法を用いて、約11,000化合物のケミカルスクリーニングを行い、58種の化合物を植物免疫活性化剤候補として選抜した。これらの作用機構を調べるため、化合物で前処理したシロイヌナズナをflg22で処理し、SA経路及びジャスモン酸(JA)経路のマーカー遺伝子の発現量の変化を調べた。その結果、選抜した化合物には、既知の植物免疫活性化剤と同様のSA経路の活性化剤だけでなく、これまでに報告のないJA経路や、両方の経路の活性化剤が含まれていた。これらは、新規の機構により植物免疫を活性化する可能性が想定され、その作用機構の解析を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の過程で着想し、開発したハイスループットのケミカルスクリーニング系を用いて、大規模な選抜を実施することができ、有望な化合物を多数単離することができた。その結果、これまで全く未知の経路を活性化する化合物の発見に結びつくことが期待される結果を得た。
平成24年度に単離した候補化合物の詳細な解析を進める。これまでに報告のないジャスモン酸経路の活性化剤が得られた可能性を検証すると共に、作用機構の解明を進める。
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