研究課題/領域番号 |
23380028
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川崎 努 近畿大学, 農学部, 教授 (90283936)
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キーワード | 免疫 / 病原菌認識受容体 / PAMPs / 信号伝達 / エフェクター / イネ / 耐病性 / RLCK |
研究概要 |
植物は、病原菌が感染した際、それぞれの病原菌を構成する因子を、病原菌に特有な分子パターン(PMAPs)として認識し、迅速な抵抗性反応を誘導する。このPAMPsの認識は、植物自身がもつ病原菌認識受容体を介して行われる。受容体が認識した情報は速やかに伝達され、様々な防御応答を誘導する引き金となるが、その信号伝達機構は不明である。我々は、白葉枯病菌が宿主の免疫反応を阻害するために、植物細胞内に分泌するエフェクターを利用して、新規な免疫因子OsRLCK2を単離した。OsRLCK2の過剰発現体では、キチンに応答した免疫応答が向上し、またOsRLCK2が細胞膜に局在することから、OsRLCK2が細胞膜に存在するキチン認識受容体であるOsCERK1と相互作用することが示唆された。そこで、酵母TwoHy brid法、免疫沈降法、BiFC法を用いて解析したところ、OsRLCK2は細胞膜上でOsCERK1と相互作用していることが明らかになった。また、OsRLCK2の抗体を作成し、生化学的な解析を行ったところ、キチンに応答してOsRLCK2がリン酸化されることが明らかになった。OsCERK1の細胞質ドメインは、タンパク質キナーゼドメインであることから、キチンを認識した活性化したOsCERK1によりOsRLCK2がリン酸化されている可能性が示唆された。さらに、OsRLCK2は、他の病原菌認識受容体とも相互作用することが明らかになった。これらの結果は、OsRLCK2が病原菌認識受容体からの信号を受け、それを下流に伝達することで、様々な防御応答を誘導していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度は、OsRLCK2とエフェクターおよびキチン認識受容体OsCERK1との相互作用解析を行うことを計画していたが、それらの相互作用の解析に加えて、OsRLCK2がキチンに応答してリン酸化修飾を受けることを見出した。この結果は、OsRLCK2がOsCERK1によりリン酸化により信号を受け取っていることを強く示唆するものであり、今後の研究の遂行に大きく寄与するものになった。
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今後の研究の推進方策 |
OsRLCK2がOsCERK1によるリン酸化修飾によって信号を受け取っていることが明らかになったので、OsCERK1によってリン酸化をうけるOsRLCK2のアミノ酸残基を特定し、OsRLCK2の活性化機構を明らかにする。また、エフェクターがOsRLCK2の活性化にどのような影響を与えているかを明らかにする。さらに、OsRLCK2が情報を伝達する植物免疫因子を同定する。
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