研究課題
植物は、病原菌が感染した際、それぞれの病原菌を構成する成分を、病原菌に特有な分子パターン(PAMPs)として認識し、迅速な抵抗性反応を誘導する。このPAMPsの認識は、植物自身がもつ病原菌認識受容体を介して行われる。我々は、前年度までの解析により、白葉枯病菌のエフェクターの標的としてOsRLCK185を単離し、OsRLCK185がキチンやペプチドグリカンの認識に関わる受容体OsCERK1と相互作用することを明らかにした。OsRLCK185の発現抑制体を作出し、キチンやペプチドグリカンに対する免疫応答を解析したところ、両PAMPsに応答した防御遺伝子の発現が減少していることが明らかとなり、OsRLCK185がOsCERK1からのシグナルを細胞内に伝達していることが強く示唆された。また、OsRLCK185は、キチンに応答してリン酸化されるため、OsCERK1によって直接、リン酸化される可能性が示唆された。そこで、in vitroキナーゼ活性測定法を用いて解析を行ったところ、OsCERK1は直接OsRLCK185の活性化ループにあるセリン残基とスレオニン残基をリン酸化することが明らかになった。さらに、Xoo1488によるOsRLCK185の阻害機構を解析したところ、Xoo1488は、OsCERK1によるOsRLCK185のリン酸化を阻害していることが明らかとなった。さらに、OsRLCK185発現抑制体では、キチンに応答したMAPキナーゼの活性が抑制されていることが分かった。OsRLCK185は、OsCERK1からのシグナルをMAPキナーゼカスケードに伝達する役割を果たしていると考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
植物免疫応答において、病原菌認識受容体の下流で、MAPキナーゼが活性化され、それに引き続いて様々な免疫応答が活性化されることがよく知られていたが、受容体からMAPキナーゼにどのように情報が伝達されているかは不明であり、植物免疫応答のブラックボックスの一つとなっていた。OsRLCK185発現抑制体では、キチンに応答したMAPキナーゼの活性化が抑制されていることから、OsRLCK185がOsCERK1からの信号をMAPキナーゼに伝達していることが明らかとなり、OsRLCK185が受容体とMAPキナーゼを繋ぐ分子であることがわかった。その成果は、Cell Host & Microbeに掲載された。
OsRLCK185が、キチン受容体であるOsCERK1からの信号をMAPキナーゼカスケードに伝達していることが明らかになった。このことから、OsRLCK185がMAPキナーゼの活性化の起点となるMAPKKKを直接、活性化している可能性が示唆される。そこで、OsRLCK185が相互作用するイネのMAPKKKを同定し、OsRLCK85によるMAPKKKの制御機構を、分子生物学的および遺伝学的に解析する。
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