研究課題
アポトーシスの実行システムを構成するcaspaseは、initiator caspaseとeffector caspaseの2つのグループに分類される。アポトーシスは、initiator caspaseにより限定分解を受けて活性化したeffector caspaseによって実行される。本年度は、カイコ細胞から、ショウジョウバエのinitiator caspaseであるぬdroncとdreddの相同体(それぞれbm-droncとbm-dreddを単離した。また、Bm-Droncについては、性状と機能の解析を行った。Bm-Droncは、438アミノ酸残基からなるタンパク質で、CARDドメインを含む長いプロドメインとp20ドメイン、p10ドメインで構成されていた。ショウジョウバエやカのDronc(それぞれDm-DroncとAa-Dronc)との相同性は、それぞれ25および26%と低くかった。また、Bm-Droncの触媒部位のアミノ酸配列はQACRGであり、Dm-DroncのPFCRGおよびAa-DroncのSICRGとは異なっていた。Bm-Droncは、昆虫細胞で一過性発現させると開裂し、昆虫細胞のeffector caspaseを活性化させ、アポトーシスを誘導した。このアポトーシスとeffector caspaseの活性化は、bm-droncのRNAiによるサイレンシングやアメリカシロヒトリ核多角体病ウイルスがコードするアポトーシス抑制因子Hycu-IAP3の一過性発現により阻害された。また、昆虫細胞にウイルスや化学物質、UVなどで人為的にアポトーシスを誘導すると、Dm-Droncの開裂が促進された。これらの結果から、今回単離したbm-droncは、昆虫細胞におけるカスパーゼ依存のアポトーシス誘導に関与しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
現在のところ、研究遂行に対して重大な支障は発生していない。
研究はおおむね順調に進展しており、研究計画の大きな変更は必要ない。当初の計画通り推進する予定である。
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