アポトーシスは、昆虫の生体防御システムを構成する重要な要素の1つであり、その誘導にはcaspaseと呼ばれるproteaseが実行因子として関与している。アポトーシス誘導刺激を受けた細胞では、上流に位置するinitiator caspaseが活性化し、活性化したinitiator caspaseの作用により活性化した下流のeffector caspaseが、様々な細胞基質を分解することでアポトーシスが誘導される。 我々は先に、チョウ目昆虫で初めてinitiator caspase Droncの遺伝子をカイコから単離した。その後、マイマイガからもDroncの遺伝子を単離し、DroncがNPV感染細胞におけるアポトーシス誘導に重要な役割を演じていることを示した。また、マイマイガNPVから、1996年以来となる、新規バキュロウイルスアポトーシス阻害因子を同定し、Apsup と命名した。 今回は、まず、Apsupによるアポトーシス阻害機構を明らかにするために、Apsupと、Droncならびにeffector caspase Caspase-1との相互作用解析を行った。その結果、ApsupはDroncが誘導するアポトーシスもCaspase-1が誘導するアポトーシスも阻害するが、Apsup と物理的に相互作用するのはDroncのみであることが示された。これにより、ApsupはDroncの活性化を阻害することにより、NPV感染細胞におけるアポトーシス誘導を阻害していることが明らかになった。 ついで、initiator caspase の上流に位置するアポトーシス誘導シグナルを明らかにするために、カイコからp53とsirt2遺伝子を単離してアポトーシス誘導能を調査した。その結果、両遺伝子はマイマイガ由来のLd652Y細胞においてアポトーシスを誘導することが明らかになった。
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