研究実績の概要 |
(1)Bactrocera属ミバエ類を送粉者として誘引する Bulbophyllum 属ミバエランの花香成分の化学的解析を実施し,新たに B. gjellerupii などのミバエランにおける phenylpropanoid 系誘引物質を明らかにした. (2)それらの揮発成分をリガンドとして雄ミバエに特異的に発達した花香受容に関わる遺伝子を探索した.ナスミバエ,ミカンコミバエ,ウリミバエの 3 種の触角と唇弁から total RNA を抽出し,シークエンスライブラリを調製した後,次世代シーケンサーでシークエンシングを行った.その結果,ミバエの触角と唇弁で発現している受容体候補遺伝子を雌雄別に網羅的に取得することができた.触角から得られた olfactory receptor (OR) や gustatory receptor (GR) 配列について,アミノ酸配列相同性に基づく系統樹を作成し複数のミバエ間で配列が似ている受容体候補遺伝子と,それと全く異なる配列を持つものを比較解析した. (3)ナスミバエにおける新規の強力な誘引活性物質 4-alkanoyloxy-3,5,5-trimethylcyclohex-2-enone の構造活性相関による最適化を試み,4-(2-methylpropanoyl) 基を持つ優れた誘引体を作出した.セグロモモミバエにおいてはセスキテルペン炭化水素のβ-caryophyllene など新たな誘引物質の野外個体群に対する有効性を示した. (4)クロコバエ類を誘引するウマノスズクサ花の揮発成分の分析ならびに特異成分 2-methyl-8-propyl-1,7-dioxaspiro[5.5]undecane の立体異性体を合成した.これらの合成物質で捕獲した野生の Desmometopa属クロコバエの花粉付着率などから送粉に関わる種の推定を試みた.
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