研究課題/領域番号 |
23380036
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
長岡 純治 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (00303933)
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研究分担者 |
白井 孝治 信州大学, 繊維学部, 准教授 (00293499)
山本 幸治 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00346834)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 昆虫精子 / 精子活性化因子 / セリンプロテアーゼ / ペプチダーゼ |
研究概要 |
カイコガで同定された精子成熟開始因子である,ユニークなセリンプロテアーゼ・イニシャトリンに注目して,オス側からみた昆虫生殖の分子メカニズムの理解を目指した。具体的な成果として, ① 大腸菌で発現させ,精製した不活性型カルボキシペプチダーゼは,トリプシンを作用させると,非特異的に分解されるのに対して,精製イニシャトリンは,特異的に分解し,結果,活性化されることが明らかとなった。そこで,イニシャトリンによる特異的切断部位を明らかにする目的から,アルギニンが連なった切断予想部位の配列を改変した発現タンパク質を作製し,活性化との関係を調査している。 ② 生殖腺,精包タンパク質を二次元電気泳動により分離することで,いくつかのスポットが精子成熟期に変化していることが明らかにし,イニシャトリンの基質タンパク質を網羅的に探索する基盤が整った。 ③ カイコガ以外の広範な昆虫における精子成熟因子の存在を明らかにする目的から,昨年度に引き続き数種のチョウ目ヤママユガ科,バッタ目,カメムシ目昆虫のオス生殖腺の形態,未交尾オスにおける精子貯蔵部位と精子の状態の記載を行った。次に,in vitroでこれら供試昆虫の貯蔵精子に対して,trypsin, イニシャトリンを含む粗抽出液を与え,カイコガと類似した反応が誘導されることを見出した。そして,この知見に基づき,イニシャトリン様タンパク質をコードする遺伝子の単離と生殖腺での発現部位について調査した。これらの結果より,チョウ目昆虫以外でもイニシャトリン様タンパク質が存在し,精子成熟因子として機能しているものと考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイコガの精子成熟開始因子である,ユニークなセリンプロテアーゼ・イニシャトリンの基質タンパク質の探索方法が確立できた。同時に,基質タンパク質候補として予想されていたカルボキシペプチダーゼの活性化に必要な特異的切断部位についての情報が得られた。 一方,チョウ目に限らず,バッタ目,カメムシ目でもイニシャトリン様タンパク質の存在とその機能を明らかにすることができた。 以上の点から,当初の目標を達せられたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
① イニシャトリン切断予想部位を様々に改変した大腸菌発現不活性型カルボキシペプチダーゼを用い,切断部位の決定を行う。 ② 生殖腺,精包タンパク質の二次元電気泳動解析ならびに逆相HPLC解析を組み合わせることでイニシャトリン基質タンパク質の同定を進める。 ③ さらに,数種バッタ目(近縁のゴキブリ目を含む),カメムシ目の昆虫,さらには,甲虫目について,生殖腺の形態,精子について記載し,同時に,イニシャトリン相同遺伝子の単離,精子のカイコガイニシャトリンに対する反応性を検討する。これらの知見に基づき,昆虫全般の精子成熟システムの分子レベルでの共通性を明らかにしていく。
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