研究課題/領域番号 |
23380037
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
東浦 康友 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60322492)
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研究分担者 |
太田 敏博 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10266893)
駒井 古実 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (30186788)
小野寺 賢介 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究員 (40414247)
原 秀穂 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, その他 (40414271)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイマイガ / double sex遺伝子 / 性決定 / ミトコンドリアDNA / 地理的分布 / ツガカレハ |
研究概要 |
北海道のマイマイガで、東部の個体と西部の個体を交配することによって得られる、雌のみや雄のみの系統について、性決定遺伝子が関与しているとの仮説のもとに、マイマイガのdouble sex遺伝子(LdDsx)を相補的DNA (cDNA) を作成して解析した。その結果、多くの生物で保存されている領域と相同性を持つマイマイガのLdDsxが同定できた。このLdDsxの系統解析をしたところ、ショウジョウバエよりもカイコに近縁であることが分かった。LdDsxが同定できたことにより、雌ばかりの系統や雄ばかりの系統の性決定の過程をこの遺伝子を用いて解析することが可能となった。 四国や九州で採集した個体のミトコンドリアDNAを解析した結果、本州や四国、九州に分布するハプロタイプ以外に、沖縄のハプロタイプが四国や九州で広範囲に分布することが明らかになった。現在、沖縄のマイマイガ (Lymantria albescens) は、本州・四国・九州のマイマイガ(L. dispar japonica) とは別種とされているが、沖縄のマイマイガが沖縄だけではなく四国や九州に分布しているとすると、遺伝子交流の可能性もあり、分類的な検討も必要となる。 マイマイガの寄生蜂である、ブランコサムライコマユバチ (Glyptapanteles liparidis) は、北海道や青森で同一のミトコンドリアDNAハプロタイプであることが分かったが、この寄生蜂の交替寄主であるツガカレハ (Dendrolimus superans) について、北海道美唄市と青森県青森市で採集した個体について解析した結果、マイマイガとは異なり同一のハプロタイプであった。これらのことは、寄生者と寄主との相互関係を明らかにする手がかりとなるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性決定にかかわる遺伝子である、double sex遺伝子を同定し解析できるようになったことで、雌ばかりや雄ばかりになる系統の性決定過程の解析が可能となった。また、マイクロサテライトの分析によって、北海道東部と西部の個体群の遺伝子交流の実態が明らかとなり、北海道の一部を別種とする根拠がなくなった。 沖縄のマイマイガが四国や九州に分布することを明らかにし、分類的再検討の必要性を明瞭にした。 寄生者と寄主との関係のダイナミクスを明らかにする材料を提供することができた。
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今後の研究の推進方策 |
double sex遺伝子の発現を解析して、雌ばかりや雄ばかりになる系統の性表現の違いを明らかにする。また、形態的にも北海道と本州の個体群の違いを解析する。 四国や九州で採集された本州・四国・九州型のミトコンドリアDNAを持つ個体と、沖縄型のミトコンドリアDNAを持つ個体での遺伝子交流の実態を明らかにするため、マイクロサテライトを分析する。また、琉球諸島の個体群についてもミトコンドリアDNAとマイクロサテライトを分析して遺伝子交流を四国と九州の個体群と比較する。 これまでに明らかになったことを一般の人にも理解できる単行本として出版する。
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