研究課題/領域番号 |
23380038
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
田中 誠二 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (50370664)
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研究分担者 |
安居 拓恵 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (80414952)
辻井 直(藤原直) 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (40568440)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | サバクトビバッタ / 相変異 / 視覚 / 触覚 / 混み合い |
研究概要 |
24年度の実験で、サバクトビバッタの成虫が混み合い刺激を感受し、それを子世代に伝達する現象を確認した。また、それらの感受期は産卵前4日であると見なしていたが、産卵6日前までの刺激もわずかであるが、影響することが分かった。そこで4日ではなく6日間刺激を与えたほうが、反応が確実に現れることがわかった。メス成虫がそれらの刺激を触角で感知し、その情報を子世代の形質決定(混み合った条件を感知すると大きな卵を生産し、それらの卵からは黒く大きな孵化幼虫が出現する。一方それらの刺激を受けないと小さな卵を産み、それらの卵からは緑色の小型孵化幼虫が出現する)に使うことを、ニジェールの系統で確認した。 暗闇において群生相メス成虫が、集団に置かれても孤独相化するという予備実験の結果を再現することができなかった。明暗条件(16時間明:8時間暗)で飼育し、群生相特有の大型卵を生んだメスを暗黒条件でオス2匹と一緒に飼育し、産卵された卵のサイズと孵化してきた幼虫の体色(群生相は黒、孤独相は緑色)を調べた。対照区として暗黒条件で単独飼育したメスからも採卵し、同様にしらべたところ、ほとんどの卵は群生相特有の大型のもので、孵化幼虫も黒色だった。 混み合いを感知する仕組みを効率的に調べる新たなシステムとして、幼虫の体色における黒化誘導を調べた。単独飼育した緑色の幼虫を集団にさらすと黒化した。触覚、視覚、嗅覚刺激の影響を調べたところ、触覚がもっとも効果的だが、これまで重要でないとされてきた視覚だけでも、黒化が誘導されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度は、飼料として与えているイネ科植物が異常高温のせいか夏季に枯死する株が多かったため、バッタの生育と繁殖がうまくいかなかった。コロニーはなんとか維持できたので、25年度は、室内でコムギを大量に栽培するなどして、対処したい。このため、実験が思うようにはかどらなかった。 群生相成虫の暗黒条件下での孤独相化に関する予備実験の結果が再現できず、時間を費やした。暗黒条件に移すステージや飼料の質が影響した可能性がある。 モーリタニアにおける野外実験が出来なかったのは、アフリカにおける異常な干ばつのために、サバクトビバッタがほとんど見られなかったからである。現地の研究者とは密に連絡をとっており、24年11月には、来日したバッタ対策センターの所長からも、様子をきくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
サバクトビバッタの混み合いによって雌成虫が感受する物質同定のアッセイ系を、処理期間4日から、より確かに刺激に対する反応が期待できる6日間の刺激期間とし、混み合い刺激を与えた後に2卵塊まで採取し、それらの卵サイズの変化と孵化幼虫の体色を記録して、反応の有無を判定する方法を採用する。物質同定のアッセイ系として、一日3時間では一貫した結果が得られなかったため、6時間に延長して行なう。幸い、行動観察によると、個体間の接触が1時間当たり1,2回程度であるため、30分に一度、試験虫をサンプルを塗布したガラス棒で刺激して、アッセイを行なう予定である。ドースレスポンスの試験を行い、ヘキサン抽出物の活性成分を分画し、検定して活性成分の同定を行なう。夏場には、室内で大量にコムギを栽培し、コロニーの維持と実権材料の確保を行なう。 親の混み合い刺激は、これまでの報告に反して、孵化幼虫の体サイズを介して間接的に行動に影響するが、直接的なものではないことを明らかにしたが、行動の群生相化をもたらす刺激要因の特定に関する実験は重要であるので、平行させて続けたい。昨年度は触覚に加え視覚の重要性を証明したが、幼虫のステージによる混み合い刺激に対する反応の違いを明らかにして、メカニズムの解明につながる効率的アッセイ方法を確立したい。 昨年度はモーリタニアでは異常気象による干ばつの影響でサバクトビバッタが採れなかったが、今年は個体群が回復した知らせを受けている。治安的な問題と実験室での研究の進行を鑑み、条件が整えばモーリタニアでの実験も実施したいと考えている。
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