研究課題
農産物からの総ヒ素摂取量において、我が国ではコメの寄与が最も高い。コメに含まれるヒ素の中で亜ヒ酸とジメチルアルシン酸(DMA)は主要な化学形態である。特に玄米に存在するDMAの由来は、土壌微生物によるヒ素代謝物が直接吸収されたものなのか、それともイネ体内での代謝物なのか、未だ不明である。これまでの我々の研究において、水稲の根面から亜ヒ酸をDMAに変換する新規の放線菌(Streptomyces sp. GSRB54株)を単離することに成功した。さらに、未知の有機ヒ素化合物を生成する細菌(Burkholderia sp. GSRB05株)も単離した。本年度は、GSRB54株のDMA合成酵素(ArsM)に関わる遺伝子を同定し、その機能を解析すると共に、GSRB54株の土壌への接種による玄米のヒ素形態への影響を調査した。GSRB54株のArsMにおけるアミノ酸配列はこれまで報告されているArsMとは相同性が低く、新規のArsM遺伝子であることがわかった。ヒ素感受性大腸菌にArsM遺伝子導入し、亜ヒ酸培地で培養するとDMAが合成され、有意にヒ酸耐性が高まった。土壌にGSRB54株を接種し水稲を栽培した場合、未接種区に比べて玄米のDMA濃度が上昇した。従って根面に生息するGSRB54株によって亜ヒ酸がDMAに代謝され、水稲に吸収されることがわかった。また、GSRB05株が作る未知の有機ヒ素化合物をNMRによって構造決定したところ、モノメチルヒ素にアミノ酸誘導体が結合した新規化合物であることがわかった。この化合物を「アルセノスリシン」と命名した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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