研究課題/領域番号 |
23380048
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀内 裕之 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00209280)
|
キーワード | 微生物 / バイオテクノロジー / 糸状菌 / PKC / 細胞壁 |
研究概要 |
プロテインキナーゼC(PKC)は酵母からヒトに至るまで真核生物全般に保存されて存在しており、哺乳類などの高等真核生物においては様々な情報伝達の場において中心的な役割を果たしていることが知られている。しかし情報伝達系などが比較的単純である酵母などの下等真核生物においては細胞壁の完全性の維持に働く機能以外は解析が進んでおらず、産業上有用なもの、動植物に対する病原性のものを多く含む糸状菌においてはその機能はほとんど未解明である。さらに我々のこれまでの研究において酵母Saccharomyces cerevisiaeではPKCをコードする唯一の遺伝子であるPKC1は破壊しても浸透圧安定化剤の存在下では生育が可能であるのに対しモデル糸状菌Aspergillus nidulansにおけるPKC1のオルソログpkcAの破壊株はそのような条件下でも生育ができず生育に必須であることが示されている。このことは糸状菌のPKCが酵母のものとは別の機能をも有することを示唆する。そこでこれまでに我々が単離しているpkcAの温度感受性株を用いて糸状菌におけるPKCの機能を解析を行い、PKCが高温ストレス下では分生子発芽時のアポトーシスの誘導を抑制することを明らかにした。また浸透圧安定化剤存在下では極性の確立に必須の機能を有することも明らかにした。また、次世代シークエンサーを利用したトランスクリプトーム解析を行い、pkcAを失活させた場合、活性化型PkcAを強制的に高発現させた場合の遺伝子発現の変化を網羅的に解析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題においては先に述べたようにpkcAの機能として高温ストレス下のアポトーシス誘導抑制、菌糸極性の確立に重要な機能を持つことを明らかにするとともに、pkcAの機能を変化させた場合の遺伝子発現の変化の網羅的解析に成功した。しかしその一方で上記の解析に時間を要し当初解析予定であったPkcAによりリン酸化を受けるタンパク質の解析に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度達成できなかったPkcAによりリン酸化を受けるタンパク質の同定を行うとともに、前年度行ったトランスクリプトーム解析の結果から興味深い遺伝子を抽出しそれら遺伝子を破壊するなどしてその機能解析を行う。またPkcAによりリン酸化を受けるタンパク質についてもその部分アミノ酸配列を決定し、それらをコードする遺伝子を同定すると共にその機能解析を行う。
|