研究課題/領域番号 |
23380049
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 幸作 京都大学, 農学研究科, 教授 (90142299)
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研究分担者 |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30273519)
三上 文三 京都大学, 農学研究科, 教授 (40135611)
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キーワード | ABCトランスポーター / X線結晶構造解析 / アルギン酸結合タンパク質 / ABCタンパク質 / スフィンゴモナス属細菌 |
研究概要 |
多糖(アルギン酸)輸送に関わるABCインポーター(AlgM1-AlgM2/AlgS-AlgS)と基質(アルギン酸)結合タンパク質(AlgQ1或いはAlgQ2)との相互作用を、ABCインポーターを膜に埋め込んで再構成したプロテオリポソームを用いて解析した。具体的には、ABCインポーター、基質結合タンパク質、及び各種リガンド存在下でその輸送機能を、ATP加水分解活性を指標に調べた。アルギン酸非添加時の活性を100%とすると、種々のアルギン酸(構成単糖:マンヌロン酸Mとグルロン酸G)オリゴ糖の存在下で200-500%程度の活性上昇が確認された。多糖アルギン酸添加時にも、濃度依存的な活性上昇が見られた。AlgQ1或いはAlgQ2存在下で、M/G組成の異なるアルギン酸オリゴ糖並びに多糖アルギン酸がATP加水分解活性を促進することから、ABCインポーターと基質結合タンパク質は、ヘテロ多糖を認識し互いに相互作用することにより、基質を輸送することが示唆された。 ABCインポーターのX線結晶構造解析を進めた。AlgQ2の存在下でABCインポーターを結晶化し、各種スクリーニングによる結晶化条件の至適化を行った。その結果、分解能3.3ÅのX線回折データを与える安定な複合体結晶が得られた。AlgQ2と大腸菌由来マルトーストランスポーターをサーチモデルとした分子置換法によりABCインポーター複合体(AlgQ2/AlgM1-AlgM2/AlgS-AlgS)の初期モデルを構築し、構造のを進めている。本結晶構造は、高分子基質(アルギシ酸)を取り込むABCインポーターの最初の例である。AlgM1-AlgM2は、ベリプラズムでアルギン酸オリゴ糖を捕捉したAlgQ2と閉じた構造で接触しているのに対し、細胞質側のAlgS-AlgSとの結合面では開いた形状を示すため、ABCインポーターは全体構造としてInward-facing構造をとっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、巨大分子を細胞内に輸送する特異なABCインポーター(AlgM1-AlgH2/AlgS-AlgS)のX線結晶構造を決定することにある。現在、このABCインポーターと相互作用するペリプラズムのアルギン酸結合タンパク質AlgQ1またはAlgQ2との複合体(AlgQ2/AlgM1-AlgM2/AlgS-AlgS)の初期モデルを構築するまでに至っている。ただ、分解能3.3ÅのX線回折データに基づいており、更に分解率を上げることによって初期の目的を達成できると考えられる。分解率を上げる方法も幾つか検討し、有望な方法を見出すに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点での最大の問題は、分解率を如何に上げるかと云うことであるが、これは地道に結晶化の至適化を図る以外に手はない。順調に成果も出ているため、研究計画の変更も必要ないと判断している。
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