研究概要 |
(1)1-プロパノール人工生合成酵素系の探索と最適化:ジヒドロキシアセトンリン酸から1-プロパノールに至る人工生合成経路として、これまで利用してきた酵素以外について検討を行った。具体的には、2,5-ジケトグルコン酸還元酵素(Dkg)等の遺伝子クローニングを行い、1-プロパノール人工生合成経路への適用を図った。その結果、Dkgを用いることで中間生成物である1,2-プロパンジオール(1,2-PD)の生成量の向上が見られ、1-プロパノールの生産性向上が期待された。 (2)1-プロパノール生産のための宿主菌株の代謝改変:宿主E.coliにおいて、中間生成物の分解代謝に関与すると考えられるaldA、gloA両酵素遺伝子と著量蓄積する乳酸の生合成に関与する乳酸脱水素酵素をコードするldhA遺伝子の破壊を試みた。また、現在想定している嫌気から微好気的な培養条件下では、TCA回路の酵素群はarcA遺伝子産物により発現が抑制されていると考えられることから、TCA回路の活性化とそれに伴う酸化型NAD(P)^+要求量増加を期待したarcA遺伝子の破壊を試みた。それぞれの遺伝子破壊株の作成に成功し、1-プロパノール人工生合成酵素遺伝子の導入を進めている。 (3)プロパノール誘導体C3化合物生産への展開:人工生合成経路上の中間物質あるいは1-プロパノールを他の物質へと変換する酵素遺伝子を導入することによって、他のC3骨格を有する有用化学物質生産への応用の可能性を検討した。プロピオンアルデヒドの酸化によるプロピオン酸生産およびプロピオン酸へのC=C結合導入によるアクリル酸生産の可能性を探索し、プロピオン酸生産活性も持つ菌株を見出した。
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