研究課題
本研究は、リボソームの生合成(成熟)の過程におけるRsgA(リボソーム小サブユニットによって活性化されるGTP加水分解酵素)とRbfA(リボソーム小サブユニット結合タンパク質)に焦点をあて、両者の関係を明らかにすることを通して、巨大機能分子複合体リボソームの分子構築の原理」という難題の解明に新たな視点から手がかりを与えようとすることを目的とするものであり、また「リボソーム成熟という分子機能とストレス応答という生理機能との接点」という新たな視点から未知の細胞機能を探ることを目的とするものである。 本研究では、昨年度までに「RsgAが生合成の最終段階でリボソーム小サブユニットからRbfAを追い出す」という機能があることを明らかにしてきた。本年度は、もう1種類のリボソーム成熟因子と考えられるRimMとの関わりについて研究を行った。RimM欠損株はRsgA欠損株と同様に16S rRNAの前駆体と考えられる17S RNAを蓄積していた。また、RimM欠損株における30Sサブユニット前駆体はRsgA欠損株における30Sサブユニット前駆体よりも、リボソームタンパク質の種類が少なかった。以上より、30Sサブユニット成熟過程において、RimMはRsgAよりも前の段階で働くことが示唆された。クライオ電子顕微鏡を用いた解析により、RsgAおよびRbfAは30Sサブユニットのbodyに結合するのに対して、RimMはheadに結合することを明らかにした。 一方、すでに我々はRsgA欠損株およびRbfA欠損株を含むリボソーム生合成関連因子の欠損株が塩耐性(浸透圧耐性)を示すことを明らかにしてきたが、塩耐性はリボソームタンパク質の欠損によってももたらされることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
リボソームは50を超えるコンポーネントからなる巨大な複合体である。その生合成はrRNAの転写・切断・修飾とリボソームタンパク質の集合が協調した複雑な過程をたどる。細菌リボソームの成熟には数十種類の因子が関与すると考えられているものの、個々の因子の具体的な役割はほとんど明らかにされていない。本年度の研究により、リボソームの成熟過程において、RsgAおよびRbfAの働きをもとにしてもう一種類の因子の働きを明らかにすることができた。また、「リボソーム生合成の異常は細胞の塩耐性(浸透圧耐性)をもたらす」という命題を、より一般的な形で示すことができた。
1.リボソーム小サブユニット上におけるRsgA のGTP加水分解活性の活性化の分子メカニズムを明らかにする。2.RsgAの欠損による塩耐性(浸透圧耐性)のメカニズムを明らかにする。
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